カルボプラチン+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ療法Expert編
(PDF版ではレイアウトが異なりますが、同じ内容です。)
- このレジメンの重要事項・ポイント
- 副作用の詳細
このレジメンの重要事項・ポイント
医師からみたポイント
- EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のないTPS 50%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として、ペムブロリズマブ単剤療法とシスプラチンあるいはカルボプラチンのプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)が行われている1)。無増悪生存期間(PFS)は、HR=0.50(Cox比例ハザードモデル)(10.3カ月 vs 6.0カ月, p<0.001, 層別log-rank検定)であり、さらに全生存期間(OS)においても、HR=0.63(Cox比例ハザードモデル)(30.0カ月 vs 14.2カ月, p=0.002, 層別log-rank検定)であったことから、ペムブロリズマブ単剤療法は、ペメトレキセドを含むプラチナ製剤併用療法に対して有用であることが確認されている。
- ペムブロリズマブとプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189試験)のPFSおよびOSは、それぞれHR=0.52(Cox比例ハザードモデル)(8.8カ月 vs 4.9カ月, p<0.0001, 層別log-rank検定)、HR=0.49(Cox比例ハザードモデル)(未到達 vs 11.3カ月, p<0.0001, 層別log-rank検定)であり、シスプラチン+ペメトレキセド療法やカルボプラチン+ペメトレキセド療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSとOSを有意に延長する証拠がある2)。
- 患者報告アウトカム(PRO)の解析も行われ、ペムブロリズマブ併用療法群がプラチナ製剤併用療法群に比べてQOLを維持させることも報告されている3)。
- 本レジメンの注意点として、PS 2症例での臨床成績および安全性は不明である。PS 2症例は細胞傷害性抗癌薬の毒性も懸念される患者群でもあり、さらに免疫チェックポイント阻害薬を併用投与することについては安全性における懸念もある。
薬剤師からみたポイント
- カルボプラチンの投与量は、Calvert式(カルボプラチン投与量(mg)=AUC×(GFR+25))に基づいて算出する。 Calvert式に用いるGFR(糸球体ろ過量)は、次の3つの方法がある。GFRは、クレアチニンクリアランス(CLcr)で代用できる。
① Cockcroft-Gault式による算出:eCLcr(女性は×0.85)=(140-年齢)×体重÷ (72×SCr(血清クレアチニン))
② 24時間蓄尿による算出:CLcr=尿中Cr濃度×1分尿量(24hr尿量÷1440分)÷SCr
③ 日本人のGFR推算式(eGFR)による算出:eGFR(男)=194×Scr-1.094×年齢-0.287
eGFR(女)=eGFR(男)×0.739 - Cockcroft-Gault式(SCr補正なし)により算出したCLcrに応じたカルボプラチンの投与量が次の上限量を超えた場合、FDA(Food and Drug Administration)の通知に基づき次の通りキャッピングを行う。
AUC 6の場合;900mg、AUC 5の場合;750mg、AUC 4の場合;600mgまでとする。
ただし、実臨床においてはカルボプラチンの投与量の算出方式によらず、投与量の上限を設定する施設もある。
- Cockcroft-Gault式及び日本人の
GFR推算式における問題点とは?
キャッピング(上限設定)とは? Cockcroft-Gault式による推算の問題点
Cockcroft-Gault式を使用してeCLcrを算出した場合、特定の患者群(Scr低値、低筋肉量、肥満、高GFR域)において腎機能が過大評価される懸念があります。 McLeanらの報告1)によると、550名の患者を対象とした調査で、Cockcroft-Gault式による推算は真のGFR(51Cr-GFR)を正確に反映しておらず、18%の患者でカルボプラチンの投与不足、23%の患者で100mg以上の過剰投与が生じていたとされています。 このことから、Cockcroft-Gault式による推定は真のGFRに伴う投与量を反映しないことが示唆されています。
キャッピング(上限設定)の背景
米国ではSCrの測定法がヤッフェ法からIDMS 法に標準化され、真のSCr値が臨床で用いられるようになり、CLcrとGFRの関係が「CLcr≒GFR」から本来の「CLcr>GFR」となりました。その結果、今までと同様にCalvert 式のGFR 値にeCLcr を代用するとカルボプラチンの投与量が過剰に算出されてしまうことが問題視された経緯があります。1.2)
FDA(Food and Drug Administration)および諸学会による安全策3)
過剰投与を回避するための対策として、FDAはGFRの上限値を125 mL/minに設定(=キャッピング)することを提案しています。これにより、AUCに基づいた最大投与量は以下の通り制限されます。
AUC 6: 900 mg
AUC 5: 750 mg
AUC 4: 600 mg
一方で、真に高いGFRを有する患者に対して一律にキャッピングを行うことは、過少投与を招く恐れがあります。 また、キャッピング以外の安全策として、以下の手法を取り入れている団体もあります。4)
・Scr値の補正: 実測値が低い場合でも、最低許容Scr値を 0.7 mg/dL とする。
・体重の補正: BMI 25 kg/m² 以上の肥満患者では、実際の体重ではなく理想体重や調整体重に補正する。推算式の単位に関する注意点
日本人のeGFR算出式で得られる値は、通常「mL/min/1.73m²」という体表面積補正後の単位です。これをCalvert式に当てはめる際は、個々の体表面積を乗じて「mL/min」へ変換(補正解除)することが原則です。特に標準体格から大きく外れる患者では、補正解除をしないことは、適切な投与量から乖離する原因となります。
カルボプラチン投与量設計において重要なことは、Scrが異常に低値・るいそう(筋肉量低下)・肥満といった背景を持つ患者において、「いかに精度高く真のGFRを推定できるか」です。症例に応じた柔軟なアプローチが、治療強度と安全性の両立には不可欠です。
- Luke McLean et.al:Gynecol Oncol. 2020 Jun;157(3):793-798.
- 今村知世ほか:医療薬学 41(11) 759―767 (2015)
- FDA:Carboplatin dosing. Last Updated: 11/27/2015
- Aaron M Praiss et.al:Gynecol Oncol. 2023 Jul:174:213-223.
- ペメトレキセドは、メトトレキサートに類した葉酸代謝拮抗薬であるので、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など腎毒性を持つ薬剤との併用は注意する。
- ペメトレキセドの重篤な毒性は、葉酸とビタミンB12プールの減少に関係している4)。現在のレジメンではこれらの補充療法が標準的に行われている。葉酸とVB12補充をしないペメトレキセド+シスプラチン療法では、グレード3以上の好中球減少や発熱性好中球減少症がそれぞれ34%および9%に発生し、補充を行った15%や0.6%に比べ多かった5)。
- 葉酸は、投与の7日以上前から1日1回0.5mgを連日経口投与する。ペメトレキセドの投与を中止又は終了する場合には、ペメトレキセド最終投与から22日間続ける。ビタミンB12は、初回投与の少なくとも7日前にビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。VB12の経口投与は推奨されない6)。ただし、最初のVB12投与をペメトレキセド導入時間を24~48時間に短縮できる可能性が報告されている7)。
- ペムブロリズマブ投与中は、免疫関連有害事象(irAE)の発現を注意深く観察する。比較的頻度が高い内分泌障害(甲状腺機能障害)の検査は、肝腎機能などのルーチン血液検査に定期的に追加しておく。
看護師からみたポイント
- 免疫関連有害事象(irAE)の副作用は、倦怠感など疾患のためと許容して発見が遅れることがあるので注意する。例えば、カルボプラチン、ペメトレキセドに由来する貧血とirAEとしての甲状腺機能障害や肝機能障害は、ともに倦怠感として認識される可能性がある。
- 同様に肺癌の進行とペメトレキセドの間質性肺炎、irAEとしての肺障害は、呼吸障害として重複する可能性がある。
- 重症糖尿病は、消化器症状や倦怠感など感冒様症状に類似していることがあり、免疫チェックポイント阻害薬投与時の体調不良は、化学療法を受けている専門施設に受診が望ましい。
- irAEの好発時期は、幅が広いので投与終了後も観察が必要である。
- Reck M, et al.: N Engl J Med. 2016; 375(19): 1823-33.
- Gandhi L, et al.: N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
- Garassino MC, et al.: Lancet Oncol. 2020; 21(3): 387-97.
- Niyikiza C, et al.: Mol Cancer Ther. 2002; 1(7): 545-52.
- Vogelzang NJ, et al.: J Clin Oncol. 2003; 21(14): 2636-44.
- Takagi Y, et al.: Cancer Chemother Pharmacol. 2016; 77(3): 559-64.
- Takagi Y, et al.: Oncologist. 2014; 19(11): 1194-9.
副作用の詳細
副作用の発現率
進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたKEYNOTE-189試験1)におけるプラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ療法(n=405)のグレード3以上の有害事象は、貧血16.3%、好中球減少15.8%、血小板減少7.9%、無力症6.2%、疲労5.7%、下痢5.2%などであった。免疫関連有害事象(irAE)は、ペムブロリズマブ併用群405例中92例(22.7%)に発生した。このうちグレード3以上の事象は36例(8.9%)であり、肺炎2.7%の他、皮膚障害が2%、腎炎1.5%であった。3例がirAEにて死亡に至った。
- Gandhi L, et al.: N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
主な副作用
※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。
| 副作用名 | 主な症状 | 薬剤による対策 | 指導のポイント |
|---|---|---|---|
| infusion reaction 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1 |
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|
| 悪心・嘔吐
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-7 |
|
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| 好中球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-14 |
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| 血小板減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-14 |
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| 皮膚障害 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 脱毛
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day14- |
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確立された予防法はない。 |
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| 大腸炎・下痢 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 間質性肺炎 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 肝機能障害
検査でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 内分泌障害 検査でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 1 型糖尿病 検査でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 筋炎 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| ギラン・ バレー症候群等 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 重症筋無力症 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| 心筋炎 自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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| ぶどう膜炎
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1- |
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※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。
- DC-003260_02

