2020.05.27
末梢神経障害対処のコミュニケーションスキルとピットフォール
患者が伝えられない症状・不安の聞き出し方 -例3.「程度」の確認 -
(PDF版ではレイアウトが異なりますが、同じ内容です。)
- 副作用
- 適用なし
- 頻発抗がん剤
- 適用なし
患者が伝えられない症状・不安の聞き出し方
例3. 「程度」の確認
- 患者背景
-
- 50代女性
- 初発卵巣がん
- TC(パクリタキセル+カルボプラチン併用)療法施行中(3コース目) 治癒目的
- 家族と同居
- 非就労者(専業主婦)
どの程度のしびれが出ていますか?
うーん、まぁ、眠れないほどではないです。
では、0(症状なし)~ 10(強い症状)で言うと3くらい?
まぁ、そうですね…。それくらいだと思います。
そのくらいの症状であれば、まだ対症療法や休薬・減量が必要なほどではないかな。
問題点
- 症状の評価が不十分である。
- NRSを使用しているが、数値を誘導してしまっている。
患者がどの程度困っているのか、具体的な聞き取りが不十分である。
エキスパートの聞き出し方と解説
- しびれによって、どんなことをするときに支障が出ていますか?程度が重くないと思っても、何か困ることがあるようであれば何でも教えてください。
- 0(症状なし)~10(強い症状)として、程度を数値で表すような方法もあります。日々意識してみて、教えてください。
- 手を使う趣味の作業などがしづらくなったりはしていませんか?
解説
- 症状を我慢してしまう患者さんもいますので、過小評価しないよう心掛けましょう。
- NRSやVASによる痛み評価を行うことは勧められますが、患者の数値の好みに左右されたり、心理的な影響を受けやすいものでもあります。判断の目安を患者の日常生活に例えてお伝えしましょう。なお、数値は絶対的な指標と考えず相対的に変化を追うことも大切です。また、患者用末梢神経障害質問票(PNQ)などを使用してもいいでしょう。
- しびれの辛さは患者さんによって異なります。手を使う趣味が出来なくなってQOLが下がっている方もいるかもしれません。一律な評価ではなく、価値観も考慮した対応ができるようにしましょう。
こんなピットフォールに注意
- 就労している患者さん
- 「業務作業にどの程度支障が出ているか」を評価指標にしてもよいでしょう。また、もし業務に支障が出ているとしても、対策は必ずしも休薬や減量だけではありません。配置転換や環境整備など、職場の協力で解決することもあります。患者さんの生活は病院内で完結するものではありませんので、悩みに応じて院内や地域の相談支援センターなど適切な場所を紹介できるようにしましょう。
