バランスを鍛えよう

発達障がいとは

最新のDSM-5という診断基準によると「発達障がい」は「神経発達症」という名前に変わりましたが、まだ一般には知られていないのでここでは「発達障がい」という名前を用いることにします。 発達障がいの中心はASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)ですが、この両者は併存していることが多く、自治体によっては5歳児健診で発達障がいのスクリーニングをしているところもあります。

ADHDは慢性疾患として薬物治療が6歳から可能です。ASDの薬物療法としては易刺激性に対して行われ、 根本的な薬物治療はありませんが、心理カウンセリング(SST含む)やペアレントトレーニング、感覚統合訓練、感情コントロールプログラムなどが行われます。

Doctor's Column

「発達障がいの音楽療法」

ASDやADHDの薬物治療の一つとして世界的に試みられているのが音楽療法なのです。ADHDのある人は小脳の容量が小さく、小脳機能が悪く発達性協調運動症も併存していることがよくあります。 発達性協調運動症はいわゆる不器用でバランスが悪く運動、特に球技が苦手な子どもに多く見られます。マイケル・H・タウト先生によれば、 音楽には小脳機能を改善する効果もあり、音楽療法を実施することが、ADHDの改善に有用ではないかと考えられています。

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医療的音楽療法

発達障がいの子どもに対して診察室で個別に神経学的所見をとることは困難であると同時に時間もかかります。 そこで、音楽療法の中で皆と一緒にやることにより、ついでに神経学的所見もとるのが、「医療的音楽療法」です。

出典:N. SUZUKI et al.Effects of Medical Music-Care Therapy for Children with Nuerodevelopmental Disorders . Psychology Research, October 2017, Vol.7 No10,541-556.
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親子で笑顔を増やそう

発達障がいの子どもはコミュニケーションが苦手です。音楽療法にはソーシャルスキルトレーニングの一面もあり、コミュニケーションスキルも上達していくと考えられています。 何ができないかではなく何ができるかに注目し、それを育み、その結果、親子とも笑顔が増えていければいいのではないでしょうか。

Topics

認知症の音楽療法

認知症とは
様々な原因で脳の神経細胞が死滅し脳が委縮し、日常生活をするうえで支障が出ている状態を言います。半数以上はアルツハイマー型認知症で女性に多いとされています。 記憶障害や見当識障害があり、進行すると自分がどこにいるかもわからなくなります。
認知症の音楽療法
デイサービスでの集団および個別の音楽療法(ストレッチ、歌体操、楽器演奏、好きな歌の歌唱等)により家族があきらめかけていた在宅介護への意欲をとりもどすことが可能だとされています。 ノンバーバルコミュニケーションとして言葉の代わりに音楽を使い、共振的態度で確かめ合うことができます。認知症者に対し音楽で反応があったことを手掛かりに好きな歌を歌うことでより確かな反応を得ることができます。
集団セッションで傾眠していても音楽の刺激が繰り返されることで認知症者の反応がより確かなものになっていくと考えられています。音楽はコミュニケーションの一つであり、音楽療法 は認知症においても効果がみられています。