Interview インタビュー
(Analytical Researcher)
微量分析の最前線で
業界全体に貢献したい
分析対象はppb
(10億分の1)レベル
現在、最新鋭のLC-MS/MSという装置を使い、医薬品中のニトロソアミン類の分析に取り組んでいます。この分析対象はppb(10億分の1)レベルという想像を絶する微量な世界なので、常にコンタミネーションと隣り合わせです。空気中の塵や器具にわずかに付着した物質が、実験結果を大きく左右してしまうのです。この見えない敵から分析対象を守るため、濃度差の大きい物質の物理的な隔離、作業手順の工夫、手袋のこまめな交換など、細心の注意を払っています。また、トラブル発生時にはチーム全体で情報を共有し再発防止に努めています。
世代を超えたアイデアが
相乗効果を生む
私たちの大きな成果の一つが「東和アミンアプローチ」です。これは、ニトロソアミン生成の要因の一つとなるアミン類に着目するという誰も思いつかなかった手法で、内川取締役の長年の研究ノウハウから生まれたコンセプトでした。分析法の開発段階では、上司から「性質の異なる2本のカラムをつなげてみてはどうか」という提案がありました。私はそのアイデアを形にする中で、既存課題を打破するために、ほとんど前例のない3種の移動相の使用を発案し、分析法に採用しました。これらの世代を超えたアイデアの相乗効果によって、10種のアミンの一斉分析を可能とする今までにない分析法を確立することに成功しました。
東和だからできる
分析を超えた価値提供
この画期的な手法を社内だけでなく、広く世の中に公開することで業界全体に貢献できるのではないかと考え、論文投稿を決意しました。レフリーからの厳しい指摘に何度も心が折れそうになりましたが、経験豊富な上司のサポートもあり、科学的な妥当性を示し抜いた末に論文が受理されました。単にデータを出すだけでなく、得られた結果を深く考察し、課題解決につながる提案まで行うこと。それが、外部の分析機関との違いであり、東和薬品だからこそ提供できる価値であると考えています。
さらに大きな課題に
分析者として挑み続ける
今の仕事に対する満足度を問われれば20%と答えるでしょう。これは悲観的な意味ではなく、満足してしまっては成長が止まると考えるからです。残り80%もの可能性があると思うと、さらに頑張れます。微量分析の技術は、今後ますます重要性を増していくと思います。将来的には、国内外の拠点にこの技術を広めるため、現地でのOJTのような形で直接指導を行うなど、技術移転を通じてこの分野の発展に貢献したいと考えています。
(2025年6月取材)

構造的リスクの解決目指す