Interview インタビュー
ゼロから手探りで挑んだ
世界初のフィルター開発
思わぬきっかけで
最先端のプロジェクトに
新卒で入社し、有機合成化学を専攻していた経験から、プロセス開発に携わりたいと考えていましたが、入社2年目で思いもよらない転機が待っていました。それが、製薬業界全体を悩ませるニトロソアミン混入問題の解決に向けたフィルター開発プロジェクトです。当初は「人手が欲しい」という要望から声をかけられ、正直なところ、当初はニトロソアミン問題への認識は浅かったのですが、調べるほどにその複雑さと社会的インパクトの大きさに惹かれ、自ら志願してチームに加わりました。入社間もない私がこのような最先端のプロジェクトに関われるとは思ってもいませんでした。
世界でも前例のない
初めての取り組み
私が担当したのは、ニトロソアミン混入の原因の一つである大気中のppbレベルの窒素酸化物 (NOx) を除去するフィルターの充填剤選定と構造形作りの検討です。ppbレベルのNOxを除去することは世界でも前例のない初めての取り組みで、文字通り何をすればいいのか分からない状態からのスタートでした。実験系の立ち上げに最も苦労し、少人数のチームで意見をぶつけ合いながら、小スケールでの試行錯誤を重ねました。うまくいった方法をスケールアップしていく過程で、充填剤の機能性・コスト面、そして実機で同じ結果が得られるのかという点を重視しながら開発を進めました。
NOx除去の研究成果を
実機でも実現
研究成果がすぐに実機に反映されて生産が行われ、実際にNOxを除去し、ニトロソアミン含有量の低い製剤を生産できた時には大きな達成感を味わいました。その一方で、実機への導入には現場との調整が不可欠です。特に生産現場からは「不確かなものを混ぜたくない」「生産量が落ちたらどうするのか」といった懸念が示されました。そこで、フィルターが安全であること、設備への影響がないことをデータに基づいて説明し、生産機の空調ラインにNOx除去フィルターを挿入するというこれまでにない試みを現場に受け入れてもらうために奔走しました。
ニトロソアミン問題の
専門家を目指して
ニトロソアミン問題は、原薬合成、製剤プロセス、包装資材、さらにはサプライチェーン全体にわたってあらゆる場所で発生する可能性があります。将来的には、各部署と連携し、経験豊かな先輩方と協働しながら、フィルターだけでなく国内外でニトロソアミン問題全般についての専門家という役割を担っていきたいと考えています。そして製剤処方等を最適化し、全ての製剤においてニトロソアミン問題を解決することが目標です。
(2025年6月取材)

構造的リスクの解決目指す