乳がん
2023.02.15

カペシタビン単剤療法Expert編

監修
東京都立駒込病院
薬剤科
医薬品情報室
後藤 総太郎先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • HER2陰性転移・再発乳癌の2次治療以降で推奨されている。1)
  • カペシタビン単剤療法にはA法・B法があるが、海外での試験ではB法で行われている。
  • 副作用のモニタリングが重要である。皮膚症状・消化器症状・感染症に注意し患者を観察する。症状に応じて休薬・減量を行うことが重要である。

薬剤師からみたポイント

  • A法・B法によって、投与量・投与期間が異なるので、投与量の確認は重要である。
  • カペシタビンのアドヒアランスを確認することが必要である。アドヒアランスが低下した場合、原因に応じて対応する。
  • 副作用のモニタリングを行い、症状の程度に応じて休薬・減量を検討する。手足症候群の頻度が高いため、ヘパリン類似物質含有製剤などを使用した保湿による予防の重要性を指導する。明らかな痛み・違和感がある時は休薬するように指導し、症状に応じてステロイド外用剤による対応を検討する。
  • 相互作用として、フェニトインの血中濃度上やワルファリンカリウムの作用増強が知られており、それぞれ血中濃度測定やPT-INRの確認が必要である。

看護師からみたポイント

  • カペシタビン単独療法はA法・B法があり、投与量・投与期間が異なることを理解する。体表面積で投与量が変わるため、服用錠数の確認が必要である。
  • 手足症候群を予防するために保湿剤による皮膚ケアについて指導するとともに、継続的に実施できているか確認を行う必要がある。また、患者の手・足の状態を観察し、症状の早期発見が行えるようにする。
  • 骨髄抑制、下痢、悪心嘔吐、色素沈着についても指導を行う。特に38℃以上の発熱、激しい下痢、悪心嘔吐のときは主治医に連絡するように指導する。
  1. 乳癌診療ガイドライン2022年版

副作用の詳細

副作用の発現率

単剤療法における副作用発現状況概要

単剤療法における副作用発現状況概要

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
手足症候群
自覚症状でわかる
発現までの日数中央値
(範囲)
A法:43日
(4-284日)
B法:30 日
(5-122 日)
  • 四肢の紅斑・色素沈着・疼痛・発赤・腫脹・水疱・びらん・機能障害
  • 手掌・足底の角化・落屑・亀裂
確立した予防法・治療法はなく、下記の外用薬・内服薬が用いられている。
  • 保湿剤(尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、ビタミンA含有軟膏など)
  • ステロイド外用剤
  • ビタミンB6
  • 明らかな痛みを感じた場合は服用を中止するよう指導。
  • 手足がヒリヒリ・チクチクする、赤く腫れる等の症状がみられたら、受診時に主治医に知らせるよう指導。
  • 保湿剤塗布による皮膚ケアを指導。
  • 手足を安静に保つ(手足を温めすぎたり、過度に足に体重がかかったり、靴で摩擦を受けたりすると症状が悪化することがある)。
  • 症状がある部分には、柔らかいパットなどをあて、過度の圧力や摩擦を避ける。
悪心
自覚症状でわかる
発現までの日数中央値
(範囲)
A法:32日
(1-599日)
B法:13日
(1-166日)
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 症状が重度のときは、メトクロプラミド等の制吐剤の投与をする。輸液等の対症療法を行う。
  • 長期にわたって続く吐き気、1日に何回もおこる嘔吐のときは主治医に連絡するように指導。
  • 吐き気・嘔吐・食欲不振時、食べたいものを少しずつ食べる。
  • 熱いものはにおいが強いので、冷ましてから食べる。
下痢
自覚症状でわかる
発現までの日数中央値
(範囲)
A法:50日
(7-599日)
B法:22日
(1-194日)
  • 軟便
  • 水様便
  • 腹痛
  • 症状が重度の場合は、止しゃ薬(ロペラミド塩酸塩など)の投与、輸液等の対症療法を行う。
  • 下痢がひどいとき(頻回におこる水のような便など)はすぐに主治医に連絡するよう指導。
  • 脱水症状に注意し、水分補給を心がける。
  • 排便時には、肛門を清潔に保つ。
好中球減少
検査でわかる
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/µL未満で発熱、または好中球数500/µL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシンなど)
  • 38℃以上の発熱に気が付いたら、すぐに主治医に連絡するよう指導。
  • うがい・手洗いを常に心がける。
  • 外出時は人ごみを避け、マスクを使用する。
  • 入浴・シャワーでいつも体を清潔に保つ。
口内炎
自覚症状でわかる
発現までの日数中央値
(範囲)
A法:57日
(1-576日)
B法:32日
(4-197日)
  • 口腔内の疼痛・発赤・出血・腫脹
  • 飲食困難
  • 含嗽薬(アズレンスルホン酸など)
  • 口の中に痛みがある、発赤がある、腫れやただれがあるときは、受診時に主治医に知らせるよう指導。
  • 口腔内を清潔に保つ。

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。