乳がん
2022.12.06

CEF療法Expert編

監修
京都桂病院 薬剤科 係長
岩根 裕紀先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • 術前、術後補助療法の場合、必要な投与量をスケジュール通りに⾏い、治療を完遂することが重要となる。そのためには、⼗分な副作⽤対策を⾏う必要がある。
  • 当科では、悪⼼・嘔吐対策だけでなく、発熱性好中球減少症などに備え、あらかじめ抗菌薬を処⽅しており、 ペグフィルグラスチムの使⽤も検討している。
  • ⾎管外漏出時にデクスラゾキサンを使⽤できるような体制を整えている。

薬剤師からみたポイント

  • 当院では、⼗分な悪⼼・嘔吐対策を⾏うため、day2以降の定時内服薬(アプレピタント、デキサメタゾン)に加えて、悪⼼時の頓服薬(メトクロプラミドなど)、また、発熱時の抗菌薬など必要時に内服する薬が数種類処⽅される。それらの効果や内服⽅法を⼗分に説明し、患者が不安なく使⽤できるようにする必要がある。
  • 脱⽑は、精神的に落ち込みやすくなるため、脱⽑が始まる時期やヘアケアなどについても説明する。エピルビシンの累積投与量(900mg/m2)を確認する。
  • 他のアンスラサイクリン系薬剤等⼼毒性を有する薬剤による前治療歴及び⼼臓部あるいは縦隔に放射線療法を受けた患者では⼼機能検査を⾏い評価されているかを確認する。
  • 治療を完遂するため、副作⽤の評価やその対策を提案し、使⽤した薬の効果や副作⽤を評価する。

看護師からみたポイント

  • 術後療法の場合、⼿術側でない腕から抗がん薬を投与するため、治療を完遂できるよう投与する⾎管を選んでいく必要がある。
  • 投与中の⾎管痛、⾎管外漏出にも注意をしながら観察を⾏っている。
  • エピルビシン投与後に⾚⾊尿がでることに驚く患者が多いため、⾚⾊尿が出ることを説明する。また、脱⽑についてもヘアケアなどの説明をする。
  • 悪⼼、嘔吐、発熱などがあれば、早めに受診するように説明する。

副作用の詳細

副作用の発現率

海外の臨床試験(FASG05試験)1)におけるCEF療法(n=268)のgrade3以上の副作用発現率は、脱毛78.8%、悪心・嘔吐34.7%、好中球減少症25.2%、口内炎3.8%、感染症3.4%、貧血0.8%などであった。

  1. French Adjuvant Study Group.: J Clin Oncol. 2001; 19(3): 602-11.より抜粋

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
脱毛
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day14-
  • 頭髪の脱毛
  • 腋毛、陰毛、眉毛などの脱毛
  • 確立された予防法はない。
  • 脱毛から回復までの過程(時期・抜け方など)を説明。
  • 見た目の脱毛量が減るため、治療前に頭髪をカット。
  • 頭皮を清潔に保つために低刺激のシャンプーを使用して優しく洗髪する。
  • 脱毛した髪が飛び散るのを防ぐため帽子・バンダナを使用。
  • パーマやカラーリングは、治療が終わるまで控える。
  • かつらなどの購入(治療前に検討することが好ましい)。
悪心
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-7
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 高度(催吐性)リスクに該当し、下記薬剤による制吐療法が推奨される。
  • アプレピタント+5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、パロノセトロンなど)+デキサメタゾン
    また、症状によりオランザピンの併用を検討する。
  • 予期性の不安による悪心・嘔吐がありそうな場合は、投与前日眠前や投与日朝にアルプラゾラムなどを使用する。
  • 若年、女性、飲酒歴なし、乗り物酔い、妊娠悪阻の有無など患者側の因子にも注目した対応が必要となる。
  • 強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • 3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • 悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • 嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • 軽い散歩などの気分転換。
好中球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-14
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • 発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • 自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • 悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • 手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • 外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • こまめに室内を清掃。

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。