悪性リンパ腫
2023.11.01

BR療法Expert編

監修
大垣市民病院 薬剤部 薬剤部長
宇佐美 英績先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • BR療法の適応は、未治療の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
  • 初発進行期高腫瘍量濾胞性リンパ腫へは、R-CVP療法(R+CPA+VCR+PSL),R-CHOP療法(R+CPA+DXR+VCR+PSL)と並び代表的な治療方法のひとつである1)
  • R-CHOP療法とBR療法を比較したランダム化比較試験では、BR療法の無増悪生存期間が優れていたが、OSは同等であった2)

薬剤師からみたポイント

  • ベンダムスチンの用法用量は、がん種あるいは併用薬により異なるため注意が必要である。
    <病態とがん種におけるベンダムスチンの用量と休薬期間>
    病態 がん種 用量
    (mg/㎡/日)
    休薬期間
    (日間)
    併用薬
    未治療 B-NHL 90 26 リツキシマブ又は
    オビヌツズマブ
    MCL 90 26 リツキシマブ
    再発又は
    難治性
    B-NHL 120 19 なし
    MCL 120 19 なし
    DLBCL 120 19 リツキシマブ
    DLBCL 90 19 リツキシマブ及び
    ポラツズマブ ベドチン

    ベンダムスチンはいずれも2日間投与、B-NHL:低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、MCL:マントル細胞リンパ腫、DLBCL:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

  • 副作用による休薬、減量基準がある。
    <ベンダムスチン休薬基準>
    好中球数減少 血小板数減少 非血液毒性 総ビリルビン 血清クレアチニン
    Grade 3 Grade 2 Grade 2 2.0mg/dL 2.0mg/dL
    <ベンダムスチン減量基準>
    がん種 減量
    (㎡/日)
    好中球数減少 血小板数減少 非血液毒性
    B-NHL及びMCL 120→90→60→
    中止
    Grade 4 Grade 4 Grade 3
    DLBCL
    (リツキシマブ併用)
    120→90→60→
    中止
    Grade 4、
    Grade 3が
    2週間以上継続
    Grade 2
    DLBCL
    (リツキシマブ及び
    ポラツズマブ ベドチン
    併用)
    90→70→50→
    中止
    Grade 3 Grade 3
  • ベンダムスチンの注射液剤では調製後、室温保存では6時間以内、2~8℃保存の場合は24時間以内に投与を終了する。
  • リンパ球減少による免疫不全が発現または増悪することがあるため、アシクロビルとST合剤の予防投与が推奨される(保険適用外)。
  • 催吐性リスクは中等度リスクであるが、遅発性の悪心・嘔吐が出現する可能性がある。また、BR療法はステロイドが治療薬として含まれないため、day2~5あたりの症状の確認と制吐対策をしっかり行う。

看護師からみたポイント

  • リツキシマブ投与30分前に抗ヒスタミン剤と解熱鎮痛剤を服用し、特に初回投与時にはinfusion reactionに注意する。
  • 注射部位の局所、あるいは腕に広がる疼痛や炎症があらわれることがある。
  • 1) 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版. 日本血液学会
    2) Rummel MJ, et al.: Lancet. 2013; 381(9873): 1203-10.

副作用の詳細

副作用の発現率

再発・再燃DLBCLを対象とした国内第Ⅲ相試験1)におけるBR療法(n=38)のグレード3以上の有害事象はリンパ球数減少89.5%、好中球数減少73.7%、白血球減少65.8%、CD4陽性リンパ球減少65.8%、血小板数減少21.1%、発熱性好中球減少症 10.5%、貧血7.9%などであった。

  1. Murayama K, et al.: Ann Hematol. 2022; 101(5): 979-89.

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
infusion
reaction
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1
  • 掻痒感、蕁麻疹
  • 顔面浮腫、顔面紅潮
  • しびれ
  • 脱力感
  • 口腔内・咽頭不快感
  • 咳、くしゃみ
  • 動悸、頻脈、悪心
  • リツキシマブの投与開始30分前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤の前投与を行う。
  • 添付文書に従った投与速度で投与する。
  • 発現時は投与速度を下げるか、投与を中止する。
  • 症状に応じて、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド、アドレナリン投与などを投与する。
  • 回復後は投与再開が可能だが、投与中止時の点滴速度の半分以下で再開する。
  • 少しでも何か異常を感じたら、すぐにスタッフに伝えるように指導する。
悪心・嘔吐
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-7
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 中等度(催吐性)リスクに該当する。
  • 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン
  • デキサメタゾンを減量し、NK1受容体拮抗薬またはオランザピンの追加併用も考慮。
  • 強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • 3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • 悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • 嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • 軽い散歩などの気分転換。
静脈炎
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-2
  • 点滴部位の痛み
  • 点滴した血管に沿った痛み
  • 静脈炎発症時に鎮痛薬を考慮する。
  • 血管外漏出ではないことを確認。
  • 血流の良い太い静脈を選択。
  • 毎回、できるだけ穿刺部位を変更。
  • 静脈炎が発現した場合は、次回投与時に別の血管を選択。
  • 血管を拡張させるため、ホットパックなどで穿刺部位の血管を温める。
好中球減少
リンパ球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day10-21
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • 発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ウイルス感染が疑われる場合は、適切な検査と抗ウイルス薬の投与を行う。
  • 自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • 悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • 手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • 外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • こまめに室内を清掃。
皮疹
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 皮疹
  • 搔痒
  • 重症度に応じて、外用・経口ステロイドを使用する。
  • 重症の場合は、ベンダムスチンを休薬する。
  • 保湿剤をこまめに塗布して、皮膚の保湿を維持。保湿剤は、すり込まずに押し当てるように塗布。
  • 入浴・シャワー浴の際は、ぬるめのお湯、低刺激の洗浄剤でやさしく皮膚を洗浄。入浴後は、早めに保湿剤を塗布。
  • かゆみは、我慢せずに伝えるように指導する。

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。