多発性骨髄腫
2026.02.16

KLd療法Expert編

監修
福島県厚生農業協同組合連合会白河厚生総合病院 薬剤科
上釜 宝志先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • 症候性多発性骨髄腫に対する救援化学療法で、1~3回の前治療を受け、少なくとも前治療で1回は奏功した患者に適応。ただし、ボルテゾミブまたは、レナリドミド、デキサメタゾン療法の前治療歴がある場合、治療中に病勢進行がみられた患者は除外される。
  • カルフィルゾミブ、レナリドミドは、腫瘍崩壊症候群(TLS)の発現頻度が高いことが報告されている。TLSの評価に必要な血清尿酸値、リン値、カリウム値やクレアチン値などの項目は確認しつつ、特に第1コース目は十分な補液やフェブキソスタットなどの予防投与などを考慮する。
  • 心不全、心筋梗塞、QT延長、心膜炎などの心障害に注意し、投与前より心機能評価を行い、その後定期的に心電図検査を行う。
  • レナリドミドによる、静脈血栓塞栓症予防のため抗凝固薬の投与を考慮する。
  • 治療前にB型肝炎のスクリーニング検査を行い、感染パターンに応じて抗ウイルス薬の投与や1~3カ月ごとのHBV-DNA定量検査のモニタリングと肝機能検査値を確認する。

薬剤師からみたポイント

  • レナリドミドは、高脂肪食摂取後の投与によりAUCやCmaxの低下が認められるため、レナリドミド服用の際には高脂肪食摂取前後は避けるように指導する。
  • レナリドミドの服用を忘れた場合、通常の服用時間から12時間以上経過しているときは、服用しないで次の分から服用する。2回分を一度に服用しないよう注意する。
  • レナリドミドは催奇形性のリスクがあるため、胎児への曝露を避けるためレナリドミド適正管理手順を遵守するよう指導する。患者区分によっては、妊娠検査実施も忘れないよう確認する。
  • 腎機能障害患者では、レナリドミドの減量が必要であり、高齢や多発性骨髄腫の進行による腎機能悪化にも注意が必要。
  • カルフィルゾミブの投与量を算出する際、体表面積が2.2m2を超える場合は、体表面積2.2m2として投与量を算出する。
  • カルフィルゾミブによるInfusion reaction予防のためのデキサメタゾンの前投与について、当院ではカルフィルゾミブ投与の30分前にデキサメタゾンを経口投与している。
  • レナリドミドによる、静脈血栓塞栓症の予防として抗血栓薬を服用している場合、カルフィルゾミブにより血小板減少が生じた場合は、抗血栓薬の投与を中断する。
  • デキサメタゾン投与により、不眠、胃不快感、高血糖などの副作用が出現する可能性があり、症状に応じて減量を検討する。

看護師からみたポイント

  • 受診時には、必ずレナリドミドの空シートを確認し、内服確認を実施する。
  • レナリドミドは脱カプセル不可で、与薬補助する際は手袋すること。補助後は石鹸と流水で手を洗うこと。体液・排泄物を取り扱う場合、手袋、マスク、ガウンを着用しなるべく使い捨てのものを使用すること。処理後は石鹸と流水で手を洗うこと。
  • レナリドミド服用により、発疹が出現する場合がある。服用初期に症状があらわれることが多いので注意する。
  • KLd療法でのカルフィルゾミブは10分かけて点滴静注だが、KLd療法とKd療法ではカルフィルゾミブの1回投与量が異なることから、Kd療法では30分かけて点滴静注なので注意する。
  1. Stewart AK, et al.: N Engl J Med. 2015; 372(2): 142-52.
  2. 日本肝臓学会.: B型肝炎治療ガイドライン(第4版). 2022.
  3. 日本血液学会.: 造血器腫瘍ガイドライン2023年版 第3版, 金原出版. 2023.
  4. レナリドミドカプセル「トーワ」適正使用ガイド(2025年7月作成)
  5. レナリドミドカプセル「トーワ」電子添文(2025年6月改訂)

副作用の詳細

副作用の発現率

再発多発性骨髄腫患者を対象としたASPIRE試験1)におけるKLd療法(n=392)のグレード3以上の有害事象は好中球数減少29.6%、貧血17.9%、血小板数減少16.6%、低カリウム血症9.4%、疲労7.7%などであった。

  1. Stewart AK, et al.: N Engl J Med. 2015; 372(2): 142-52.

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
催奇形性
発現時期の目安
day1-
  • 催奇形性
  • 低用量ピル(OC)
  • 子宮内避妊器具(IUD)
  • 緊急避妊薬(避妊をせずに性交渉した場合など)
  • 薬剤以外の避妊法として、両側卵管結紮・切除術がある。
  • 投与開始予定4週間前から投与終了4週間後まで、避妊法の実施を徹底するように指導する。
  • 確実な避妊法は「性交渉を控えること」であることを説明する。
  • 性行為をする場合、下記の指導を行う。
    • 男性(患者・女性患者のパートナー):コンドームを正しく着用する。
    • 女性(患者):OC、IUD、両側卵管結紮・切除術のいずれかを行う。
    • 女性(男性患者のパートナー):上記避妊法の実施を奨める。
  • 避妊に失敗した可能性がある場合、妊娠した可能性がある場合は、速やかに連絡するよう指導する。
血栓塞栓症
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 急激な片側下肢の腫脹・疼痛
  • 胸痛
  • 突然の息切れ
  • 四肢の麻痺
など
  • 低分子ヘパリン
  • ヘパリン
  • ワルファリン
  • 低用量アスピリン
  • 抗凝固薬
  • 脱水は血栓塞栓症のリスクとなるため、適度な水分補給を心がける。
  • 血栓塞栓症と思われる症状があらわれたら、すぐに医療機関に連絡するように指導する。
好中球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-28
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • 発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • 自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要である。
  • 悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認する。
  • 手洗い、含嗽、歯磨きを励行する。
  • シャワー浴などによる全身の清潔を保持する。
  • 外出時はマスクを着用、可能な限り人混みは避ける。
  • こまめに室内を清掃する。
血小板減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-21
  • 皮下出血
  • 粘膜組織からの易出血
  • 血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • 歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • 出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • 出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。
心障害
検査でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 息切れ
  • 呼吸困難
  • 浮腫
  • 動悸
  • カルフィルゾミブの減量・休薬・中止
  • 必要に応じて電解質補正
  • 少しでも何か異常を感じたら、すぐにスタッフに伝えるように指導する。
重篤な
皮膚症状
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 口唇や眼瞼の浮腫
  • 水疱性の発疹
  • 抗アレルギー薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • 外用ステロイド薬
  • 経口プレドニゾロン(短期投与)
  • 剥離性、剥脱性、水疱性の皮疹、血管浮腫、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis)などが疑われる場合はレナリドミドを中止し、皮膚科医と連携して対応にあたる。
  • 口唇や眼瞼の浮腫、水疱性の発疹がみられた場合には、直ちに主治医へ連絡するようにする。
めまい・眠気
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • めまい
  • 眠気

− 

  • 自動車運転など危険を伴う機械の操作は避けるようにする。
末梢神経障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day3-
  • 四肢のしびれ・痛み・筋力低下
  • 腱反射減弱
確立した予防法・治療法はないが、下記の投与が試みられている。
  • デュロキセチン(適応外)の投与が提案されている
  • ミロガバリン、プレガバリン、メコバラミン等が投与されるケースもあるが、末梢神経障害診療ガイドライン2023では「推奨なし」である
  • 少しでも症状に気づいたら、連絡する。
  • 早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、VASなどの客観的評価を行う。
  • 感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文字を書くといった機能の程度)の評価を行う。
  • 患部のマッサージ・保温、手指の運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • 感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

*本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。
〇本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の最新の電子添文をご参照ください。

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