羽生結弦 プロフィギュアスケーター
吉田逸郎 東和薬品 代表取締役社長
東和薬品
山形工場
#03
フィギュアスケーターとして。製薬メーカーの社長として。観客や患者さんに届けるものは違っても、共通していることとは?羽生さんと吉田社長の対談は、盛り上がっていきます。
僕もフィギュアスケートに対して、こだわるという部分はすごく大事にしていて。フィギュアスケートっていうのは、ある意味では、ただ氷の上を滑っていって、ジャンプして、スピンして…。細かく挙げていくといろんな要素がありますけれども、そういう要素を一つ一つこなしていくっていう感じなんですね。
だけど僕の場合、今、フィギュアスケートの動き的にこれってないよねとか、フィギュアスケートだけどこういう動きもできるんだっていう。こういう動きができる、という段階から、できるだけじゃなくて、他の分野の人も、フィギュアスケートを知らない人たちでも、いろんな人たちが見た時に「あ、これ面白いね」「これいいね」って思ってもらえるように滑ることが僕のこだわりなんです。
こだわりの部分で言うと、製薬メーカーとしての東和薬品さんのこだわりや、先ほどのお話にもあった新しい基盤を作るにあたっての難しさなどについて、どのように挑戦していこうとお考えですか。
会社経営している以上、売り上げや利益はものすごく大事なことなのですが…。私たちは、「何のための会社ですか」というのを大事にしたいなと思っているんです。昨今のビジネスの考え方って、売り上げと利益。とにかく利益のために、というようなことを言っていますけれども、私の考えは少し違います。
やはり製薬メーカーですので、お薬を作って患者さんに飲んでもらって、「苦手なお薬が飲めたね」「これまでは飲みにくくて途中でやめてしまったけど、これだったら飲み続けられそう」って言ってもらいたい。病気を治すためのお薬なので苦くてもいいんだというのではなくて、飲む本人も嫌な思いをしなくても飲めるようなお薬がある方がいい。東和薬品のこのお薬があったから飲めた、というようなことを患者さんに言ってもらえる。会社として、そんなお薬づくりをしたいですね。
その結果、評価されて売り上げにつながって、利益につながっていくことが一番理想的なんです。最初から、売り上げや利益のために何をするのかだけで進んでいくと間違った答えが出る。法律上、薬効上、許される認められた範囲でお薬を作って売って、コストもものすごく抑えれば売り上げと利益は出てくるのですが、一体なんのための利益なのでしょう。
最近、効率などを優先して品質管理を疎かにしてしまった結果、間違ってしまった実例が医薬品業界で出てしまいました。何のための会社か、というものが全く違ったものになっていくので。そういうことは東和薬品グループにおいてはやりたくないですね。
何のためにこだわるのか?というと、お薬を提供することで患者さんに健康を取り戻していただく。そして健康になるためにも、より飲みやすいお薬を、ということです。お薬を飲むことで自分が健康になれるなら自分からお薬をきちんと飲もう、という患者さんの治療への積極的な行動を推進しようと。
これを「服薬アドヒアランス」と言うのですが、そのためには、飲みやすいお薬でないといけません。苦いお薬だと、いくら分かってはいても飲むのが嫌だなと思いますよね。それではアドヒアランスに繋がらないので、飲む人のために、健康になるために、飲みやすいお薬づくりを頑張りましょう。飲みやすいお薬を提供しましょう、と。そういう会社になりたいという思いで、これからもお薬づくりに向き合っていきたいですね。
お薬っていうのは、本当に体調がいい人に届くわけではなくて、必要だからこそ飲んでいる方々がいて。ただ、そのお薬に慣れている方もいれば、慣れてない方もいらっしゃる。それは、小さいお子さんから嚥下能力が弱まっているお年寄りの方々も含めて。
フィギュアスケートも、本当に、すごく、難しくて。フィギュアスケートをたしなむことに慣れている方々は、「あ、こんな技があるよね」っていうのを分かってくれていて、なんとなく「あ、これは難しい技なんだ」っていうことも分かってくれるんですけど。フィギュアスケートを、ずっと見てきているわけではない方々が演技を見たときに、パッと見て「いいね」って言ってもらえることって、正直そんなにないんですね。
それが僕は、“お薬の飲みやすさ”と一緒だなって思っていて。僕たち的には伝わりやすさだったり、見やすさだったり、みたいなところにもあるかもしれないのですが、一般の方々が見て、「フィギュアスケートってよく分かんないけど、なんとなくこのスケート面白いね」とか「このスケートいいね、なんか感じたよね」って思ってもらえるようなものを目指したいな、って。そういうところは、ある意味で東和薬品さんと共通しているのかなって感じましたね。
水なしでも飲むことができるOD錠は、お薬の飲みやすさを追求する東和薬品のこだわりが凝縮されています。今回は、OD錠がどのくらい溶けやすいものなのかを、羽生さんに実験していただきました。
ものすごく苦かったり、収れん性と言ってしびれるような苦みを感じる薬があるんですよ、OD錠で。なかなか苦味をマスキングできないような。それを東和薬品独自のRACTAB技術によって、口の中での溶けやすさにもこだわりながら、口の中で感じたくない苦味を上手くマスキングするんです。
私たちがお届けする製品のこだわりのなかでも、代表的なものが、このOD錠ですね。OD錠と普通錠は、一見、同じような錠剤に見えますが、OD錠は口の中で溶けるというお薬です。羽生さん、溶けやすさの違いをちょっと実験してみてもらえますか。
白色のこちらが、普通錠。黄色のこちらの錠剤が、RACTAB技術を使ったOD錠。
(水の入った容器の中にいれて、揺らしている)
(OD錠も、水の入ったもうひとつの容器にいれて揺らしている)
あ、(OD錠は)もうすでに割れましたね。へぇー、面白いですね。結構溶けますね。でも、こっち(普通錠)はまだ硬いままですね。これが口の中で、勝手に溶けていくということなんですね。
それで、口の中でも苦味を感じなかったらベスト、ということですね。
そうですよね。
お薬によっては、まだ完全に苦味をマスキングできていないものもありますし、まだまだ研究の余地があるということです。
(第4回につづく)
宮城県仙台市出身。2014年ソチ五輪に出場、フィギュアスケート男子シングル日本初の金メダルを獲得。2018年平昌オリンピックでも金メダル獲得し、オリンピック2連覇という偉業を成し遂げる。2022年、プロ転向を表明。現在プロフィギュアスケーターとして、アイスショーの企画やプロデュース、出演まで、その活躍の幅を広げている。