肺がん
2022.09.26

ペメトレキセド単剤療法Expert編

監修
和歌山労災病院 薬剤部 薬剤部長
下川 福子先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • ペメトレキセドの副作用を軽減するために必要な薬剤(葉酸、ビタミンB12)を処方する、患者が薬剤の処方目的を理解し正しく服薬ができるように患者教育を行うことが重要である。
  • 薬剤師には葉酸とビタミンB12が適正に処方されているかどうか確認をお願いしたい。特にビタミンB12注射は9週毎の投与であるため医師だけでは管理は困難である。薬剤師の処方支援をお願いしたい。
  • 葉酸は自宅で患者さんが毎日服用する薬剤である。患者さんが服薬の必要性について理解し必ず服用することが重要である。薬剤に関することなので是非、薬剤師から説明をお願いしたい。
  • 投与開始基準の一つにCCr値45mL/分以上がある。診察中にこの計算ができる医師は恐らく少ないと思うので是非、薬剤師によるチェックをお願いしたい。
  • 医師だけでは副作用の見落としがあるかもしれない。薬剤師、看護師の視点でより安全な治療を患者さんに提供できるようお願いしたい。

薬剤師からみたポイント

  • 葉酸とビタミンB12が適正に投薬されていることを確認することが重要である。
  • 治療開始前に、患者さんの処方薬や市販薬、サプリメント等を確認し葉酸やビタミンB12が含まれている場合は内服中止を説明する。また、NSAIDsなどを併用するとペメトレキセドのクリアランスが低下し副作用が増強する薬剤もある。ペメトレキセドを安全に使用するには患者さんの服用薬全てを把握し副作用をモニタリングすることだと考える。
  • ビタミンB12注射は9週毎の投与であるため薬剤師による処方支援が必要である。
  • 葉酸は、独特な味があるため飲みにくいと感じる患者さんがいる。服薬の必要性を理解していただき、飲みにくい場合はオブラートや服薬補助ゼリーなどをご提案する。ご自宅で毎日服用する薬剤なので保険薬局の薬剤師との連携も重要と考える。

看護師からみたポイント

  • ペメトレキセドの催吐性リスクは「軽度」であるが、悪心を訴える患者さんは少なくない。ドンペリドンやメトクロプラミド錠で軽減するので心配な患者さんには予め医師に処方を依頼している。
  • 頻度は少ないが眼障害(脂漏、涙通障害、結膜炎など)もある。抗がん剤治療において眼障害は見過ごされやすい副作用なので常にチェックを心掛けている。

副作用の詳細

副作用の発現率

化学療法歴のあるⅢ期、Ⅳ期の非小細胞肺癌を対象としたJMEI試験1)におけるペメトレキセド療法(n=265)のグレード3以上の有害事象は、好中球減少5.3%、疲労5.3%などであった。

  1.  Hanna N, et al.: J Clin Oncol. 2004; 22(9): 1589-97.

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
悪心・嘔吐
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-7
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 通常、予防的制吐薬の投与は推奨されない。必要に応じてday1にデキサメタゾンを投与する。
  • メトクロプラミドなどを必要に応じて処方をしておく。
  • 強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため十分な説明が必要。
  • 3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • 悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)。
  • 嘔吐後は、冷水やレモン水などでうがい。
  • 軽い散歩などの気分転換。
好中球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-14
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)。
  • 発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • 自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • 悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • 手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • 外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • こまめに室内を清掃。
血小板減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-14
  • 皮下出血
  • 粘膜組織からの易出血
  • 血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • 歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • 出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • 出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。
皮膚障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-21
  • 発疹、落屑
確立した予防法・治療法はないが、下記の外用薬・内服薬が用いられる。
  • 保湿剤(尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、ビタミンA含有軟膏など。アルコールを含まない低刺激性のものを選択)
  •  ステロイド外用剤(部位や症状の程度によってステロイドランクや塗布量を選択)
  •  経口抗ヒスタミン薬
  •  経口ステロイド薬
  • 保湿剤をこまめに塗布して、皮膚の保湿を維持。保湿剤は、すり込まずに押し当てるように塗布。
  • 入浴・シャワー浴の際は、ぬるめのお湯、低刺激の洗浄剤でやさしく皮膚を洗浄。入浴後は、早めに保湿剤を塗布。
  • 紫外線吸収剤を含まない日焼け止め(紫外線散乱剤のみ含有)などを使用して紫外線を避ける。

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。