多発性骨髄腫
2026.02.02

Bd療法Expert編

監修
大阪市立総合医療センター 薬剤部 副部長 
中尾 將彦先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • Bd療法は、ボルテゾミブとデキサメタゾン(DEX)の併用療法である。ボルテゾミブにDEXを併用することにより、抗腫瘍効果が増強されるとともに、ボルテゾミブによる間質性肺炎や消化器毒性の発現リスクが低下する1)
  • Bd療法は、移植適応のある未治療多発性骨髄腫に対して、腎障害などを有する場合の寛解導入療法として推奨されている。また、移植適応のない未治療多発性骨髄腫では、患者の状態に応じ選択されることがある2)。また、再発・難治性骨髄腫に対する寛解導入療法として選択される場合がある2)
  • ボルテゾミブによる末梢神経障害により治療継続が困難となる場合がある。ボルテゾミブの投与経路を静注から皮下注への変更で、末梢神経障害の発症頻度を抑えることができる3)
  • DEXの投与により、感染症や血栓症、白内障を誘発することがあり、年齢に応じた減量が勧められる。

薬剤師からみたポイント

  • ボルテゾミブの薬剤調製は、投与方法の違いにより溶解する濃度が異なる。静注投与時は1.0mg/mL(ボルテゾミブ注射用3mg 1Vを生理食塩液3.0mLで溶解)、皮下注投与時は2.5mg/mL(ボルテゾミブ注射用3mg 1Vを生理食塩液1.2mLで溶解)で使用する。
  • 小容量規格ボルテゾミブ(2mg)の導入により、調製時の残薬廃棄量と医療費の削減が期待できる4)
  • CYP3A4の阻害薬(ケトコナゾール、イトラコナゾール)又は誘導薬(リファンピシン等)を併用している患者では、ボルテゾミブの副作用又は効果の減弱について注意深く観察する。
  • 副作用発現時の減量の目安として、副作用発現時の投与量が1.3mg/m2の場合1.0mg/m2への減量、1.0mg/m2の場合0.7mg/m2への減量、0.7mg/m2の場合投与中止が望ましい。
  • ボルテゾミブによる肺障害に対し、間質性肺炎等を疑う異常所見が無い事を確認し投与する。
  • ボルテゾミブによる末梢神経障害に対し、末梢神経障害が発現する可能性の薬剤の併用に注意する。
  • NCCNガイドライン(多発性骨髄腫5)、がん関連の感染症の予防と治療6))では、ボルテゾミブによる治療は帯状疱疹の発現リスクHighに分類されており、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの予防投与※*を考慮することが推奨されている。
  • 腫瘍崩壊症候群のリスクが高い場合(腫瘍量が多い、脱水や腎障害の合併など)は、高尿酸血症治療剤の投与(フェブキソスタット、ラスブリカーゼ等)と補液の予防措置を考慮し、ボルテゾミブの投与を行うこと。
  • アシクロビル(内服薬)については、平成23年9月28日保医発0928第1号「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取り扱いに関する通知」に『「ボルテゾミブ使用時の管理」に対して処方した場合、当該事例を審査上認める』とされていることよりボルテゾミブ治療中の帯状疱疹予防目的のアシクロビルも保険審査上認めるとされている。
    帯状疱疹に対するバラシクロビル、ファムシクロビルの予防投与は国内で承認された効能・効果ではない。

  • *本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。

看護師からみたポイント

  • ボルテゾミブの皮下投与後、注射部位反応(疼痛、炎症、硬結など)を観察する。前回と同じ部位への皮下投与は避け、左右の大腿部、腹部に交互に投与する。
  • ボルテゾミブの投与後、肺障害が現れることがあるので、息切れや咳嗽、呼吸苦、SpO2低下、ラ音の聴取などを観察する。
  • ボルテゾミブの投与後、心障害が現れることがあるので、脈の乱れや全身のむくみなどを観察する。
  • ボルテゾミブの投与後、末梢神経障害が現れることがあるので、しびれや疼痛、筋力低下、立ちくらみ、排尿障害などを観察する。
  • ボルテゾミブの投与後、腫瘍崩壊症候群が現れることがあるので、電解質や腎機能を観察する。
  • ボルテゾミブの投与後、めまいや立ちくらみ、気を失ったり、目が見えにくくなったリスク事があるので、危険を伴う機械操作(自動車の運転等)に携わっていないか確認する。
  1. Gotoh A, et al.: Int J Hematol. 2006; 84: 406-12.
  2. 日本血液学会 編; 造血器腫瘍診療ガイドライン 2024年版. 第3.1版, 金原出版. 2004.
  3. Moreau P, et al.: Lancet Oncol. 2011; 12(5): 431-40.
  4. 宇佐美英績、他. 日本病院薬剤師会雑誌, 2022; 58(9): 1049-55.
  5. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Multiple Myeloma V7, 2021
  6. NCCN Prevention and Treatment of Cancer-Related Infection V1, 2021

副作用の詳細

副作用の発現率

65歳以下で未治療の多発性骨髄腫患者を対象としたIFM2005-01試験1)におけるBd療法(n=239)の有害事象は感染症48.1%、末梢性ニューロパチー45.6%、疲労28.5%、胃腸障害26.8%、貧血15.9%、発疹11.7%、血小板数減少10.9%などであった。

  1. Harousseau JL, et al.: J Clin Oncol. 2010; 28(30): 4621-9.

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
肺障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 咳嗽
  • 息苦しい
  • 発熱
など
  • ステロイド
  • ステロイドパルス療法
  • 抗菌薬
  • 抗真菌薬
  • 早期発見のポイントは、患者本人による自覚症状の気づきであるため、肺障害の自覚症状について説明し、疑われる症状がみられたら速やかに医療機関に連絡するようにする。
心機能障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 息苦しい
  • 息切れ
  • むくみ
  • 倦怠感
など
  • β遮断薬やACE阻害薬を考慮
  • 心機能障害を疑う症状がみられたら速やかに医療機関に連絡するようにする。
好中球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-28
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • 発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • 自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要である。
  • 悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認する。
  • 手洗い、含嗽、歯磨きを励行する。
  • シャワー浴などによる全身の清潔を保持する。
  • 外出時はマスクを着用、可能な限り人混みは避ける。
  • こまめに室内を清掃する。
血小板減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-28
  • 皮下出血
  • 粘膜組織からの易出血
  • 血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • 歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • 出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • 出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。
貧血
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day21-
  • 口唇・眼瞼粘膜などの蒼白
  • 息切れ
  • めまい
  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • 貧血傾向が出現した場合には、初期対応として鉄剤の投与を考慮する。
  • Hb値<7g/dLを目安として赤血球輸血を検討する。
  • 緩徐に進行した場合、自覚症状に乏しいので注意。
  • 体力低下に応じた周辺環境の整備や動作の補助。
  • 四肢の冷えに対する保温。
末梢神経障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day3-
  • 四肢のしびれ・痛み・筋力低下
  • 腱反射減弱
確立した予防法・治療法はないが、下記の投与が試みられている。
  • デュロキセチン(適応外)の投与が提案されている
  • ミロガバリン、プレガバリン、メコバラミン等が投与されるケースもあるが、末梢神経障害診療ガイドライン2023では「推奨なし」である
  • 少しでも症状に気づいたら、連絡する。
  • 早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、VASなどの客観的評価を行う。
  • 感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文字を書くといった機能の程度)の評価を行う。
  • 患部のマッサージ・保温、手指の運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • 感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

*本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。
〇本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の最新の電子添文をご参照ください。