多発性骨髄腫
2026.02.02

BLd療法・BLd-lite療法Expert編

監修
日本赤十字社 大阪赤十字病院 薬剤部 がん薬物療法課長
山瀬 大雄先生

このレジメンの重要事項・ポイント

医師からみたポイント

  • 【BLd】65歳未満で重要臓器機能の保持されている初発多発性骨髄腫患者に対しては、効果が迅速で深い奏効を期待でき、かつ自家造血幹細胞採取 効率に悪影響を与えない導入療法を施行後、自家造血幹細胞移植を併用した大量MEL療法を実施することが推奨される。その推奨導入療法として、高い奏効割合が期待できるBLd療法があり、3~4コース施行後に自家末梢血幹細胞採取と保存を行う1)
  • 【BLd Lite】米国ではBLd療法が移植非適応患者における標準治療と位置付けられている。しかし、その根拠となるSWOG S0777試験における登録患者の57%が65歳未満の患者であること、そしてBLd療法を受けた患者のおよそ1/3でGrade 3の末梢神経障害を認めたことから、わが国における移植非適応患者の標準治療と位置付けることは困難であるが、その後、薬剤を減量したBLd Lite療法の有効性と安全性が報告されており,選択肢の一つと考えられる1)
  • ボルテゾミブの投与経路としては、静脈内投与と皮下投与があるが、皮下投与の方が末梢神経障害の発現頻度が少ないとの報告がある2)
  • レナリドミドは催奇形性を示す可能性があり、胎児への薬剤曝露を防ぐため、適正管理手順を遵守する必要がある。医師は適正管理手順の説明に加え、患者および薬剤管理者の同意取得、遵守状況確認書の作成を行う必要がある。

薬剤師からみたポイント

  • 移植適応患者に対するBLd療法と、非移植適応患者に用いるBLd Lite療法とでは、ボルテゾミブの投与間隔や、レナリドミドの1日投与量および内服期間が異なることに注意する。
  • NCCNガイドライン(多発性骨髄腫3)、がん関連の感染症の予防と治療4))では、ボルテゾミブによる治療は帯状疱疹の発現リスクHighに分類されており、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの予防投与※*を考慮することが推奨されている。
    ※平成23年9月28日保医発0928第1号「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取り扱いに関する通知」では、原則として、「アシクロビル【内服薬】」を「ボルテゾミブ使用時の管理」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの通知もある。帯状疱疹に対するバラシクロビル、ファムシクロビルの予防投与は国内で承認された効能・効果ではない。
  • ボルテゾミブでは、Grade 3以上の非血液毒性(末梢性ニューロパチー又は神経障害性疼痛においては疼痛を伴うGrade 2も含む)又はGrade 4の血液毒性に該当する副作用が発現した場合は、回復するまで休薬し、投与を再開する場合には、減量を考慮する。
  • レナリドミドでは、血小板減少(未治療の場合:25,000/μL未満、再発又は難治性:30,000/μL未満)や好中球減少(未治療の場合:500/μL未満、再発又は難治性:1,000/μL未満)が発現した場合、休薬後、減量を考慮し再開する。それ以外の副作用においてもGrade 3以上の副作用が発現した場合には、休薬か中止を考慮する。
  • レナリドミドは、腎機能障害のある患者に対して、クレアチニンクリアランス、透析の有無によって、投与量及び投与間隔の調節を考慮する必要がある。
  • レナリドミドは、高脂肪食摂取後の投与によってAUC及びCmaxの低下が認められることから、本剤は高脂肪食摂取前後を避けて投与することが望ましい。
  • レナリドミドの血栓塞栓症予防として、必要に応じて、学会のガイドライン等を参考に抗血栓薬又は抗凝固薬の予防投与を考慮する。なお、静脈血栓症及び動脈血栓症の発現リスクの評価を行った上で、必要に応じて、学会のガイドライン等1)5)を参考に抗血栓薬又は抗凝固薬の予防投与を考慮する。
  • レナリドミド調剤時は、適正管理手順に従い、患者登録や、遵守状況確認書の確認及び調剤データの登録を行う必要がある。
  • ボルテゾミブ調製時は、静脈内投与と皮下投与で、溶解後の最終濃度が異なるため、溶解液量と採取量に注意する。
  • *本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。

看護師からみたポイント

  • ボルテゾミブを皮下投与する場合の投与部位は、左右の大腿部、腹部に交互に投与するなど、前回と同じ位置への投与を避けて行う。また、内筒を少し引き血液の逆流がないことと神経損傷に注意し刺入する。
  • レナリドミドにおいて、入院時の誤投与事例が報告されていることから、配薬および与薬時には十分に確認を行う必要がある。また、服薬介助時や内服患者さんの排泄物や体液を取り扱う際には、薬剤曝露予防を行う。
  1. 日本血液学会.: 造血器腫瘍ガイドライン2023年版 第3版, 金原出版. 2023.
  2. Philippe Moreau, et al.: Lancet Oncol. 2011 May; 12(5): 431-40.
  3. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Multiple Myeloma V7, 2021
  4. NCCN Prevention and Treatment of Cancer-Related Infection V1, 2021
  5. 日本循環器学会.: 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)

副作用の詳細

副作用の発現率

65歳以下で未治療の多発性骨髄腫患者を対象としたIFM2009試験1)におけるBLd療法継続群(n=350)のグレード3以上の有害事象は好中球数減少47.4%、血小板数減少14.3%、末梢性ニューロパチー12.0%、貧血8.9%などであった。
65歳以上で移植非適応の多発性骨髄腫患者を対象とした第Ⅱ相試験2)におけるBLd-lite療法群(n=43)のグレード3以上の有害事象は低リン血症34%、疲労16%、好中球減少症14%、発疹10%、高血糖、精神障害、全身筋力低下各4%などであった。

  1. Attal M, et al.: N Engl J Med. 2017; 376(14): 1311-20.
  2. O'Donnell EK, et al.: Br J Haematol. 2018; 182(2): 222-30.

主な副作用

※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
催奇形性
発現時期の目安
day1-
  • 催奇形性
  • 低用量ピル(OC)
  • 子宮内避妊器具(IUD)
  • 緊急避妊薬(避妊をせずに性交渉した場合など)
  • 薬剤以外の避妊法として、両側卵管結紮・切除術がある。
  • 投与開始予定4週間前から投与終了4週間後まで、避妊法の実施を徹底するように指導する。
  • 確実な避妊法は「性交渉を控えること」であることを説明する。
  • 性行為をする場合、下記の指導を行う。
    • 男性(患者・女性患者のパートナー):コンドームを正しく着用する。
    • 女性(患者):OC、IUD、両側卵管結紮・切除術のいずれかを行う。
    • 女性(男性患者のパートナー):上記避妊法の実施を奨める。
  • 避妊に失敗した可能性がある場合、妊娠した可能性がある場合は、速やかに連絡するよう指導する。
血栓塞栓症
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 急激な片側下肢の腫脹・疼痛
  • 胸痛
  • 突然の息切れ
  • 四肢の麻痺
など
  • 低分子ヘパリン
  • ヘパリン
  • ワルファリン
  • 低用量アスピリン
  • 抗凝固薬
  • 脱水は血栓塞栓症のリスクとなるため、適度な水分補給を心がける。
  • 血栓塞栓症と思われる症状があらわれたら、すぐに医療機関に連絡するように指導する。
重篤な
皮膚症状
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 口唇や眼瞼の浮腫
  • 水疱性の発疹
  • 抗アレルギー薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • 外用ステロイド薬
  • 経口プレドニゾロン(短期投与)
  • 剥離性、剥脱性、水疱性の皮疹、血管浮腫、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis)などが疑われる場合はレナリドミドを中止し、皮膚科医と連携して対応にあたる。
  • 口唇や眼瞼の浮腫、水疱性の発疹がみられた場合には、直ちに主治医へ連絡するようにする。
肺障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 咳嗽
  • 息苦しい
  • 発熱
など
  • ステロイド
  • ステロイドパルス療法
  • 抗菌薬
  • 抗真菌薬
  • 早期発見のポイントは、患者本人による自覚症状の気づきであるため、肺障害の自覚症状について説明し、疑われる症状がみられたら速やかに医療機関に連絡するようにする。
心機能障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • 息苦しい
  • 息切れ
  • むくみ
  • 倦怠感
など
  • β遮断薬やACE阻害薬を考慮
  • 心機能障害を疑う症状がみられたら速やかに医療機関に連絡するようにする。
好中球減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-28
  • 易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • 好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • 発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • 発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • 自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要である。
  • 悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認する。
  • 手洗い、含嗽、歯磨きを励行する。
  • シャワー浴などによる全身の清潔を保持する。
  • 外出時はマスクを着用、可能な限り人混みは避ける。
  • こまめに室内を清掃する。
血小板減少
検査でわかる
発現時期の目安
day7-28
  • 皮下出血
  • 粘膜組織からの易出血
  • 血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • 歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • 出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • 出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。
貧血
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day21-
  • 口唇・眼瞼粘膜などの蒼白
  • 息切れ
  • めまい
  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • 貧血傾向が出現した場合には、初期対応として鉄剤の投与を考慮する。
  • Hb値<7g/dLを目安として赤血球輸血を検討する。
  • 緩徐に進行した場合、自覚症状に乏しいので注意。
  • 体力低下に応じた周辺環境の整備や動作の補助。
  • 四肢の冷えに対する保温。
めまい・眠気
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day1-
  • めまい
  • 眠気

− 

  • 自動車運転など危険を伴う機械の操作は避けるようにする。
末梢神経障害
自覚症状でわかる
発現時期の目安
day3-
  • 四肢のしびれ・痛み・筋力低下
  • 腱反射減弱
確立した予防法・治療法はないが、下記の投与が試みられている。
  • デュロキセチン(適応外)の投与が提案されている
  • ミロガバリン、プレガバリン、メコバラミン等が投与されるケースもあるが、末梢神経障害診療ガイドライン2023では「推奨なし」である
  • 少しでも症状に気づいたら、連絡する。
  • 早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、VASなどの客観的評価を行う。
  • 感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文字を書くといった機能の程度)の評価を行う。
  • 患部のマッサージ・保温、手指の運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • 感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

*本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。
〇本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の最新の電子添文をご参照ください。