TOWA Mini Clinic Series 高血圧について 監修 札幌医科大学 名誉教授 日本医療大学 総長 島本 和明 先生 2019年7月改訂

  • どんな病気?
  • どんな治療?
  • どんな食生活?
  • どんな
    ライフスタイル?
  • どんな薬?
  • どんな病気?

    血管にかかる血液の圧力が、基準値より高くなっている状態です。

    心臓はポンプのように伸縮して血液を血管(動脈)に送り出しています。血液が流れるときに血管にかかる圧力が血圧です。血圧には収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)があり、その両方の数値を測定します。

    高血圧は、診察室血圧で収縮期血圧140mmHgあるいは拡張期血圧90mmHg以上、家庭血圧で収縮期血圧135mmHgあるいは拡張期血圧85mmHg以上の場合をいいます。

    成人における高血圧基準値

    高血圧の発症は生活習慣と深く関わっています。

    高血圧には、原因が特定できない本態性高血圧と他の病気によって引き起こされる二次性高血圧があります。日本人の高血圧の約9割は本態性高血圧で、遺伝的要素と生活習慣がその発症に関わっていると考えられています。

    高血圧になりやすい生活習慣

    これらの生活習慣は糖尿病や脂質異常症、高尿酸血症(痛風)などの生活習慣病とほぼ共通する要因で、そのため他の生活習慣病を合併するケースも少なくありません。他の生活習慣病との合併は、動脈硬化を進行させる要因にもなります。

  • どんな治療?

    自覚症状がなくても、血圧を下げる治療が必要です。

    高血圧と診断されても、ほとんど自覚症状はありません。そのため、軽視しがちですが、放置すれば命に関わる重い病気につながります。

    高血圧は血管に強い刺激を与えるので、血管は硬く、もろくなり、内部が狭くなります。これが動脈硬化です。
    血圧を下げる治療をしなければ、血管が狭くなる動脈硬化によって血圧がさらに上がり、それによって動脈硬化もさらに進行するという悪循環に陥ります。その結果、脳卒中や心臓病、腎臓病などの病気を合併する可能性が高くなるのです。

    生活習慣の改善と降圧薬治療が、高血圧治療の両輪です。

    高血圧の治療は、降圧目標値をめざして生活習慣の改善と降圧薬による治療を行います。生活習慣の改善が治療のベースとなり、必要に応じて降圧薬を服用します。降圧目標値(診察室血圧)は75歳未満の成人で130/80mmHg未満、75歳以上の高齢者で140/90mmHg未満と設定されています。

    家庭での血圧測定・記録を
    習慣化

    リラックスできる家庭で測定した「家庭血圧」は、緊張しがちな医療機関で測定した「診察室血圧」より低くなるといわれています。最近では医学的にも家庭血圧を優先する方針が打ち出されています。日々の血圧変化は治療の重要なデータとなるので、血圧測定・記録を毎日の習慣にするようにしましょう。
    血圧の測り方のポイント
    高血圧のセルフケア 4つのポイント
  • どんな食生活?

    1日の食塩摂取量6g未満をめざして、減塩メニューの徹底を。

    食生活で最も重視するのは減塩です。食塩の主成分であるナトリウムは血圧を上昇させます。通常の食生活で食塩摂取量は1日9~11gといわれていますが、高血圧の場合、これを約半分の6g未満にすることを目標とします。そのため、主な食品に含まれる食塩量を知るとともに、だしや酢などをうまく使って減塩メニューを工夫しましょう。

    主な調味料・加工食品の食塩量

    魚や野菜を中心としたバランスのとれた食生活を。

    肉類や卵などに多く含まれる飽和脂肪酸やコレステロールは血圧を上昇させるのに対して、魚や植物油などに含まれる不飽和脂肪酸は血圧を下げる働きがあります。また、野菜や海藻、大豆などには血圧を下げる働きのあるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや食物繊維が多く含まれています。高血圧の場合、魚や野菜を中心としたバランスのよい食事をとることが大切です。

    肥満を予防するカロリーコントロールや節酒も大切です。

    肥満傾向の人は、まず適正体重への減量を心がけます。それ以外の人も食べ過ぎないよう、カロリーコントロールが必要です。また、アルコールについてもエタノール換算で男性1日20~30mL以下、女性1日10~20mL以下に節酒しましょう。

    1日の適正な酒量の目安
    (男性)
  • どんなライフスタイル?

    1日30分以上の有酸素運動を習慣化しましょう。

    適度な運動には、血圧を下げる効果があります。また、運動は肥満予防やコレステロール、中性脂肪の減少などにも有効です。ウォーキングやサイクリングなど無理なくゆったりと行える有酸素運動を、毎日30分以上行う習慣をつけましょう。激しい無酸素運動は心臓に負担がかかり、急激に血圧を上昇させるので逆効果です。有酸素運動とともに、ストレッチや軽い筋トレを行うと効果的です。どちらも筋肉を刺激することで、血流を促進し、血圧を安定させます。家庭や職場などで、空いた時間に簡単にできます。

    どこでもできる軽い筋トレ

    ストレスの少ないゆとりのある生活を。

    ストレスは高血圧には大敵です。できるだけストレスをためない、ゆとりのある生活を送りましょう。職場でも家庭でも規則正しい毎日を過ごし、趣味や娯楽で上手に気分転換を図るのがポイントです。また、家族も病気を理解して、食事や運動、治療の継続などに協力するようにしてください。

    日常生活で血圧が上がるとき

    寒さは血管を収縮させ、血圧を上昇させます。そのため、冬季には暖房に配慮し、薄着も避けましょう。また、冬季のトイレや浴室は注意が必要です。日常生活では、入浴、トイレでのいきみ、起床時、過度の喜びや怒りなどによって血圧が上がることがあります。入浴は熱すぎるお湯や長湯は避け、ぬるめのお湯に5~10分入るようにしましょう。
  • どんな薬?

    降圧薬には効き方や副作用が異なるさまざまな種類があります。

    降圧薬は、脳や心臓、腎臓の血管に重い病気を起こすリスクの程度によって、服用開始時期が決められます。

    降圧薬治療を開始する時期

    降圧薬には第一選択薬(合併症のない高血圧で最初に投与される薬)として4種類の薬があり、その他にもよく使われる薬があります。さらに異なる薬効をもった成分を1つの薬に配合した配合剤もあります。これらは効き方や副作用がそれぞれ異なり、合併症の有無などによって使い分けられます。

    降圧薬の種類

    長期にわたって根気よく服用を続けることが大切です。

    降圧薬治療を開始したら定期的に通院し、数カ月経って降圧目標値まで下がらなければ薬を変更したり、他の薬を併用したりします。血圧が安定してきたら、副作用をチェックしながら同じ薬を継続します。血圧が目標値まで下がっても、薬をやめるとすぐに血圧が上昇する場合があるので、ほとんどの場合は服用を続けます。そのため、治療は長期にわたりますが、根気よく継続することが大切です。ジェネリック医薬品の使用など経済的負担を軽減する方法もありますので、医師・薬剤師に相談してみましょう。

    降圧薬治療の注意点
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