WHOの世界的なてんかん活動の紹介
(日本てんかん学会のサイトへ移動します)
- どんな病気?
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高齢者てんかんは
どんな背景? -
間違えられやすいのは
どんな病気? - どんな治療?
- どんなライフスタイル?
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どんな病気?
てんかんという病気は、不整脈と炭の火種をイメージしてみてください。
てんかんは、脳の神経細胞の電気活動が一時的に乱れることによって、てんかん発作が繰り返して起こる脳の慢性的な疾患です。たとえば不整脈は、心臓の心拍のリズムが乱れた状態ですので、てんかんは脳の不整脈のようなものとイメージするとわかりやすいでしょう。
てんかんは、炭火の火種にたとえることもできます(下図)。
水(抗てんかん薬)を適切にかけ、火種を消していきます。水をかけるのをやめたり(服薬を怠る)、強い風が吹いたりすると(睡眠不足、過労)、炭は燃えやすくなり、火力の勢いが再び増します。一定の期間、水をていねいにかける必要があります(服薬を継続)。高齢者てんかんでは、けいれんを伴わない発作も多いです。
てんかん発作は、脳の一部から発作が始まるタイプと、脳の両側で同時に発作が始まるタイプに大別できます(下図)。
高齢者のてんかんでは、脳の一部から発作が始まるタイプが多いです。高齢者のてんかんは、受け答えが不明瞭になるような発作が多く、けいれんがみられないことから、ほかの疾患との見分けが難しいとされます。そのため、受診が遅れたり、見逃されていたりすることは少なくありません。
高齢者てんかんに多い意識障害の発作、症状
- 一時的にぼんやりする
- 反応がない、乏しい
- 急に動きが止まる
- 口をモグモグさせる
- 意味のない動作を繰り返す
- ふらふら歩き回る
- 周囲がわからなくなる
- 急に物忘れが数分~数時間※続く
※個人差があります
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高齢者てんかんはどんな背景?
てんかんはあらゆる年代に起こる病気です。
てんかんは、乳児から高齢者まで誰でもかかる可能性のある病気です。人口の約1%の方にみられ、日本国内では約100万人のてんかん患者さんがいるといわれています。
特に70歳以上は発症率が増加する傾向がみられます。高齢者では、さまざまな原因によって発症することが特徴です。
てんかん発作を原因別にみると、高齢者の場合は脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)が最も多いといわれています。そのほか、脳炎、認知症、脳腫瘍、頭部外傷なども原因となり、全体の約半数は画像検査で病変がみとめられません2)。
健常の高齢者が発症することもあります。 -
間違えられやすいのはどんな病気?
てんかんによって物忘れが引き起こされることもあります。
高齢者てんかんでは、一時的な健忘(=物忘れ)症状がみられることがあります。これを「一過性てんかん性健忘」といいます。
発作的な物忘れは、数分~数時間※続き元に戻ります。この一時的で元に戻ることがアルツハイマー型認知症との区別になります。口をモグモグさせる(自動症)、実際にはない臭いや味を感じる(嗅覚・味覚の幻覚)などの症状が一緒に起きることもあります。
※個人差があります。発作時にスマホで撮影
発作の様子がわかる動画は診断・治療に役立ちます。患者さんの安全が確保でき、対応可能であれば、家族や周囲の方がスマートフォンや携帯電話で撮影してみてください。診察時に主治医に動画記録を見てもらいましょう。てんかんの症状がほかの病気と誤解されてしまうことがあります。
一時的な健忘症状は、周囲が発作に気づかないことがあります。患者さんは記憶の一部がないことから、話のつじつまが合わなくなり、周囲から認知症やうつ病と勘違いされることもあります。物忘れ外来を受診する患者さんも多くみられます。
誤解されやすい病気
- アルツハイマー型認知症
- うつ病
- 双極性障害
- 不安神経症
- 心因性非てんかん性発作
- 一過性全健忘 など
高齢者てんかんの特徴(認知症との違い)
- 意識や記憶が数分単位で一時的に悪化する
- 自動症(口をペチャペチャさせる、手をモゾモゾさせるなど、特徴的な動作を繰り返す) など
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どんな治療?
高齢者てんかんは、薬で改善することが多いといわれています。
てんかんの治療では、発作をうまくコントロールし、患者さんが元の自分らしい生活を送れるようにすることを目指します。抗てんかん薬によって脳の電気活動を整える薬物療法が基本です。
高齢者てんかんは薬による効果が比較的高く、約90%の患者さんが抗てんかん薬によって発作を抑制できているといわれています3)。
3)赤松直樹,山野光彦,辻 貞俊. 高齢者のてんかん. 医学のあゆみ. 232(10):973-977, 2010ほかの薬との飲み合わせや、肝臓・腎臓・心臓の機能低下には注意が必要です。
高齢者は、高血圧などの持病がある人が多いため、ほかの治療薬と抗てんかん薬を飲み合わせる場合は注意が必要です。肝臓・腎臓・心臓の機能が低下している場合には、抗てんかん薬の投与量を減らすこともあります。
主治医はこうした点を考慮しながら、患者さんそれぞれに合った抗てんかん薬を選んでいきます。眠気やふらつきによる転倒に注意しましょう。
抗てんかん薬は、眠気やふらつきなどの副作用が出る場合があリます。眠気やふらつきから転倒し、骨折や事故につながる可能性がありますので十分注意しましょう。
心配なことがあれば、自己判断で服薬をやめるのではなく、すぐに主治医に相談しましょう。 -
どんなライフスタイル?
適切な服薬、十分な睡眠を心がけましょう。
主治医の指示通りに抗てんかん薬の服用を続けましょう。不規則に服用したり、飲み忘れたりすると、体内の薬の量が不十分になって、発作がコントロールできなくなる可能性があります。
睡眠不足も、てんかん発作の誘因になります。睡眠を十分にとり、規則正しい生活を送るよう心がけましょう。アルコールについて
アルコールは、一部の抗てんかん薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。また、アルコール摂取は睡眠を浅くし、てんかん発作を誘発する可能性もあります。注意しましょう。入浴時の発作には特に注意しましょう。
入浴時の発作はとても危険です。予防を工夫し、いざというときにも備えましょう。
気をつけたい点
- 原則、シャワーにする
- 浴室には鍵をかけない
- もし湯船につかる際には見守りのもと、浴槽のお湯の量は少なくする
- 転倒防止、ケガ防止のマットを敷く
浴槽で発作が起こったとき
- お湯から顔を上げて呼吸しやすいようにする
- 難しい場合は栓を抜いて湯量を減らす
- 意識が回復するのを待つ
- 浴槽からゆっくり引き上げる
自動車の運転については、主治医とよく相談しましょう。
てんかんを持つ人は、運転免許を取得する際、新規・更新いずれの場合も医師の診断書が必要となります。
道路交通法上、運転が可能な状況でも、抗てんかん薬を飲み忘れたときや発作が起きそうな不安があるときなどは、運転を控えるようにしましょう。