TOWA Mini Clinic Series 監修 女性のてんかんについて 新宿神経クリニック 院長 渡辺 雅子 先生 2022年1月作成

  • どんな病気?
  • どんな治療?
  • 妊娠のためには
    どんな注意が必要?
    (準備と計画)
  • 妊娠のためには
    どんな注意が必要?
    (妊娠~出産・育児)
  • 妊娠のためには
    どんな注意が必要?
  • どんな病気?

    発作が繰り返しておこる病気です。

    てんかんは、脳の神経細胞の電気活動が一時的に乱れることによっててんかん発作が繰り返しておこる脳の慢性的な疾患です。年齢や性別、人種などに関係なく、幅広く発症します。
    てんかんは「焦点てんかん」と「全般てんかん」に大きく分けられます。焦点てんかんは、脳の一部分で発作がおき、全般てんかんは脳全体で発作がおきるものです(下図)。発作の症状は、数秒間ぼーっとする、手足がこわばる、けいれんをおこす、全身の力が抜ける、意識を失う、などさまざまです。

    てんかんはごくありふれた病気です。

    てんかんは、乳児から高齢者まで誰でもかかる可能性のある病気です。人口の約1% の方にみられ、日本国内では約100万人のてんかん患者さんがいるといわれています。母親がてんかんを持つ場合、その子どもの発症率は8.7%と報告されています1)。一定の遺伝性はありますが、てんかんを持つ母親から生まれる子どもの90%以上がてんかんを発症しない、ともいえます。
    1)Ottman R, et al. Am J Hum Genet. 43(3): 257-264, 1988
  • どんな治療?

    発作をコントロールするための薬物療法が基本となります。

    てんかんの治療では、発作をうまくコントロールし、患者さんが自分らしい生活を送れるようにすることを目指します。抗てんかん薬によって脳の電気活動を整える薬物療法が基本です。
    毎日きちんと薬を飲むことで、約70%の人が発作を十分コントロールできます。症状をやわらげ、発作の回数を減らすこともできます。

    薬が効きにくい場合には外科治療も検討されます。

    薬物療法で発作がコントロールできない場合は、外科手術など、別の方法も検討されます。
    小児の場合、外科手術の結果が成人より良いと報告されていることから、比較的早い時期に外科手術を考慮することがあります。

    発作のタイプに合った薬を使います。

    抗てんかん薬には20種類以上があり、てんかん発作のタイプによって使い分けられています。主治医は患者さんの発作タイプを診断し、以下のポイントも考慮しながら、患者さんそれぞれに合った抗てんかん薬を選んでいきます。

    抗てんかん薬は、患者さんひとりひとりによって必要量が異なります。主治医は患者さんの状態をみながら、副作用を抑えて発作をコントロールできる、適切な投与量を調整していきます。
  • 妊娠のためにはどんな注意が必要?(準備と計画)

    計画的な妊娠を考えましょう。

    妊娠・出産に関しては、妊娠前に考慮しておきたい事柄があります。事前に理解を深めて準備しておくことで、胎児や患者さん自身へのリスクが少なくてすみます。
    妊娠・出産が現実的かどうか、家族、主治医と相談しましょう。てんかんの重症度、育児環境、家族が対応可能な支援なども踏まえて、時間をかけて一緒に考えていきましょう。
    妊娠を希望する場合、妊娠の1年以上前から相談し、準備していくことをおすすめします。

    避妊について

    妊娠・出産のリスクはてんかんの方も一般の人とさほど変わりません。しかし、妊娠に向かない抗てんかん薬を服用している場合は、避妊は確実に、複数の方法で行いましょう。また、一部の抗てんかん薬は経口避妊薬(ピル)の効果を弱めることがあります。

    胎児への影響など、気になることがあれば主治医に相談しましょう。

    抗てんかん薬の中には、妊娠に向かないものがあります。しかし、服薬を中止すれば、妊娠中にてんかん発作がおきたり、発作回数が増えたりして、流産する可能性もあります。胎児への影響を減らすためには、妊娠前に薬の変更や量の調整などが大切です。必ず主治医に相談しましょう。

    主治医と産婦人科医の連携が大切です。

    産婦人科の担当医にも、てんかんに関連したリスクを十分理解してもらいましょう。
    てんかんの主治医と産婦人科医の連携が重要です。主治医から産婦人科医へ紹介状を書いてもらうなど、産婦人科医と主治医が適切な方法で連絡できるようにしておいてもらいましょう。
  • 妊娠のためにはどんな注意が必要?(妊娠~出産・育児)

    「発作がおきないようにすること」が妊娠~出産期は最も大事です。

    妊娠中も服薬の継続と規則正しい生活が大切です。
    自己判断で抗てんかん薬をやめたり量を減らしたりすると、発作を引きおこしかねません。発作は妊娠・出産の大きなリスクです。発作による転倒や事故から、流産につながる恐れがあります。発作がおきているときは、胎児が低酸素状態になる危険もあります。
    妊娠~出産期は、発作がおきないようにすることが最も重要です。
    また、妊娠中は体内動態の変化によって抗てんかん薬の血中濃度が低下し、薬の効果が低くなることがあります。妊娠中も定期的に通院し、主治医の指示通りに服薬しましょう。

    葉酸について

    抗てんかん薬の服用に関係なく、妊娠前から妊娠中も、食事から葉酸を十分に摂ることが推奨されています。抗てんかん薬の中には、血液中の葉酸濃度を低下させるものがあるため、必要に応じて葉酸を健康食品で摂取することをすすめられたり、処方されることがあります。気になることがあれば、迷わず主治医や産婦人科医に相談しましょう。

    家族と協力して、お子さんも自身も大切にしましょう。

    育児中の母親は睡眠不足になりがちです。睡眠不足や疲労は症状悪化の引き金になることがあります。授乳中の発作により、お子さんが転落するなどの事故を防ぐためにも、育児をひとりで頑張りすぎず、パートナーや家族に手助けしてもらいましょう。
    また、忙しい中でも、薬の飲み忘れがないように十分注意しましょう。

    服薬していても基本的に授乳は可能です。

    抗てんかん薬の服用中も授乳は可能とされています。しかし、一部の抗てんかん薬は、母乳を通して赤ちゃんに移行することがありますので、赤ちゃんの様子を注意深く観察するようにしましょう(母乳をあまり飲まない、睡眠が長い、泣き声が小さい、などがないか)。
    また、授乳による寝不足や疲労が発作の悪化を招くこともありますので、母乳で育児をするかどうかについては、主治医とよく相談しましょう。
  • 妊娠のためにはどんな注意が必要?

ページ先頭へ