TOWA Mini Clinic Series 監修 統合失調症について 京都大学大学院医学研究科 精神医学 教授 村井 俊哉 先生 2020年1月改訂

  • どんな病気?
  • どんな治療?
  • どんな薬?
  • 心理社会的治療とは?
  • 家族はどんな役割?
  • どんな病気?

    考えや感情がまとまらない心の状態が長く続く病気です。

    統合失調症は、脳内の考えや感情をまとめる(統合する)機能が十分に働かなくなる(失調する)状態が長く続き、下記のような症状が現れ、仕事や学業、生活に支障が生じる病気です。ほぼ100人に1人がかかるといわれており、特別な病気ではありません。主に10代後半~30代の若い世代で発症し、多くの患者さんが回復しています。
    病気の原因はよくわかっていませんが、ストレスや遺伝的素因、生活環境などさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。

    幻覚、妄想、感情や意欲の減退、記憶力・注意力の低下などが主な症状です。

    統合失調症の症状は個人差が大きく、患者さんによってさまざまな症状が現れます。
    特徴的な症状は、幻覚(とくに幻聴)や妄想など本来ないはずのものがあると感じる「陽性症状」、感情や意欲など本来もっている力が弱まる「陰性症状」、記憶や思考、判断などの能力が低下する「認知機能障害」の3種類です。
    統合失調症では一般的に病気の初期には陽性症状が前面に現れ、長期化すると陰性症状が目立ってくるという傾向があります。

    統合失調症の主な症状
  • どんな治療?

    統合失調症は適切な治療で回復することができる病気です。

    統合失調症は適切な治療を受ければ回復に向かう病気です。早期診断・早期治療が早い回復につながるので、できるだけ早く受診することが大切です。
    治療は通院を基本として、陽性症状が激しい場合など必要に応じて入院します。治療期間は一般的に長期にわたり、よくなったり、悪くなったりを繰り返します。一般的な治療経過は下図のとおりですが、治療の期間や経過には個人差があります。
    統合失調症の症状の経過

    薬物療法と心理社会的治療が治療の両輪です。

    統合失調症の治療は、症状を抑える薬物療法と社会生活機能を回復させる心理社会的治療(精神療法やリハビリテーション)を組み合わせて行います。これによって、再発が予防できることもわかっています。また、これらの治療のベースとして、信頼できる人間関係や安心できる生活環境が重要です。

    患者さんを支えるチーム医療

    統合失調症の治療はリハビリテーションなどを含む総合的な内容となるので、多くの専門家が参加して、チーム医療で患者さんを支えます。患者さんの家族もこのチームの一員です。
  • どんな薬?

    抗精神病薬による症状の抑制を目的とした治療が中心です。

    統合失調症になると、脳内で情報をやりとりする神経伝達物質のバランスが崩れることがわかっています。抗精神病薬は神経伝達物質を調節して、症状を緩和させます。抗精神病薬には、さまざまな種類があり、同じ種類の薬でも、錠剤や内用液など色々な剤形もあります。医師と相談しつつ、自分に合った薬を見つけることが大切です。

    抗精神病薬の副作用

    抗精神病薬には他の薬と同様に副作用がありますが、その現れ方には個人差があります。副作用が気になる場合は、医師と相談するようにし、自己判断で薬をやめないようにしてください。主な副作用には、眠気、だるさ、立ちくらみ、のどの渇き、便秘、体がスムーズに動かなくなる(錐体外路症状)、体重増加、血糖値の上昇などがあります。

    回復と再発予防のために服用し続けることが大切です。

    抗精神病薬は単剤を基本とし、少量からスタートして、効果と副作用を確認しながら必要に応じて増量し、患者さんにとって最適な投与量を決定します。効果が現れるまで一般的に2~4週間を要し、副作用が先に現れる場合もあります。
    急性期は薬物療法が中心で、回復期以降は心理社会的治療と併用します。抗精神病薬には再発予防効果があります。再発を予防するため、症状がなくなっても服薬を継続すること(維持療法)が重要です。

    薬を服用する際の注意点
  • 心理社会的治療とは?

    病気で低下した社会生活機能の回復を図る心理社会的治療

    心理社会的治療では主に精神療法とリハビリテーションが行われます。患者さんは病気によってさまざまな生活機能が低下し、「生活のしづらさ」(生活障害)を抱えています。心理社会的治療の目的は患者さんがこのような社会生活機能を回復し、社会でその人らしく生きられるようにすることです。

    主な心理社会的治療

    再発を防ぐために

    統合失調症は再発しやすい病気です。治療を続けながら再発予防に取り組むことが大切です。
    セルフケアのポイント
  • 家族はどんな役割?

    病気を正しく理解し、患者さんとのコミュニケーションに努めましょう。

    統合失調症治療のベースとして、信頼できる人間関係や安心できる生活環境が重要です。家族や周囲の人たちの心身両面のサポートは大切です。まずは統合失調症という病気を理解し、家族が病気であることを受け入れましょう。そして、それを踏まえて、患者さんとのコミュニケーションや患者さんへのサポートを工夫しましょう。

    病気の経過ごとの対応
    患者さんとのつきあい方の
    ポイント

    ご家族へのメッセージ

    患者さんのサポートだけを考えるのではなく、ご自身の生活と人生も大切にしましょう。自分の生活を犠牲にして献身的に尽くすというやり方では長続きしませんし、患者さんも大きな心理的負担を感じます。ご自身の心身の健康を維持し、趣味や生きがいなどをもちましょう。また、家族がつらい思いで孤立しないように、家族会などで同じ立場の方々と交流し、情報交換するのもよいでしょう。
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