TOWA Mini Clinic Series 糖尿病について 監修 東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター センター長/臨床専任教授 宇都宮 一典 先生 2020年11月改訂

  • どんな病気?
  • どんな治療?
  • どんな食生活?
  • どんな
    ライフスタイル?
  • どんな薬?
  • どんな病気?

    血糖値の高い状態が慢性的に続く病気です。

    食事から摂取された炭水化物は腸管でブドウ糖に消化されます。ブドウ糖は肝臓を経由して血液に入り、全身の細胞に取り込まれ、体を動かすエネルギー源になります。ブドウ糖が細胞に取り込まれたり、肝臓などに蓄積されるのを促進し、血液中のブドウ糖の量(血糖値)をほぼ一定に保つのが、膵臓から分泌されるインスリンです。糖尿病はこのインスリンの作用不足により、血糖値の高い状態が慢性的に続く病気です。大別して膵臓の障害によりインスリンがつくられない「1型糖尿病」と、肥満や生活習慣のためインスリンの働きや量が不足する「2型糖尿病」があります。日本で大部分を占めるのが、生活習慣病の代表である2型糖尿病です。

    インスリンの働きと糖尿病

    糖尿病でこわいのは合併症です。

    糖尿病になっても、初期の段階ではほとんど症状は現れません。しかし、長期に高血糖が持続すると、さまざまな症状が出てきます。適切な治療をせずに放置していると、少しずつ血管や神経に悪い影響を及ぼし、身体のいろいろなところに合併症を引き起こします。とくに細い血管の障害による網膜症、腎症、神経障害は、糖尿病の3大合併症と呼ばれています。太い血管では脳卒中や心筋梗塞が起こりやすくなります。また、免疫力が低下するため、感染症にかかりやすくなります。

    糖尿病の主な症状
    糖尿病の主な合併症
  • どんな治療?

    合併症の発症・進行を防いで、健康寿命を長く維持するのが目的です。

    糖尿病の治療の目的は、合併症を予防し、「健康寿命」をできるだけ長く維持することにあります。このためには日ごろから血糖状態を良好に保つ血糖コントロールが治療の中心となります。目標値は症状や年齢などによって異なり、患者さんごとに設定されます。また、合併症を防ぐには、血圧と血清脂質のコントロールも大切です。

    血糖コントロール目標 (65歳以上の高齢者については「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を参照)

    HbA1cってなに?

    糖尿病の血糖状態を判断する数値には、血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)があります。HbA1cはブドウ糖と赤血球のヘモグロビンが結合したもので、過去1~2カ月の平均的な血糖状態がわかります。血糖値は食事の時間や内容でその都度変化するので、HbA1cを目安にするのです。

    食事療法・運動療法を中心として、薬物療法を併用します。

    糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法です。1型糖尿病では最初からインスリン療法が必要になります。2型糖尿病では一般的にまず食事療法と運動療法に取り組み、2~3カ月続けても目標の血糖コントロールを達成できない場合に薬物療法の併用を開始します。自分の状態を知り、治療に役立てるために、血糖値や血圧、体重などを毎日測定し、糖尿病連携手帳などに記録する習慣をつけましょう。

    シックデイのときの対応

    かぜや胃腸炎などの病気にかかって、発熱や下痢、嘔吐、食欲不振などにより体調をくずして、食事ができない日のことを「シックデイ」といいます。血糖コントロールが良好な場合でも、このような状態では血糖値が乱れやすくなることがあります。安静にして脱水症状にならないよう水分を補給し、消化のよい食事をできるだけとるようにしましょう。シックデイのときは、医師に相談しましょう。
  • どんな食生活?

    適正カロリーの摂取と栄養バランスのとれた食事が大切です。

    1. 腹八分目としましょう。
    2. 食品の種類はできるだけ多くしましょう。
    3. 朝食・昼食・夕食を規則正しくとりましょう。
    4. ゆっくりよくかんで食べるようにしましょう。

    外食と飲酒はできるだけ控えましょう。また、肥満の人は標準体重を目標にしますが、5%の減量で十分に効果は出ます。
    1日の総エネルギー摂取量の
    求め方(目安)

    栄養素のバランスを考えたメニューづくり。

    糖尿病食では、ただエネルギー摂取量を制限するだけではなく、過不足なく体に必要な栄養素を摂取できるよう栄養バランスを考慮することが重要です。

    3大栄養素のバランスのよいとり方
  • どんなライフスタイル?

    ゆったりと全身の筋肉を使う有酸素運動を。

    運動によって筋肉が活発に働くと、筋肉でのブドウ糖消費量が増え、血液中のブドウ糖が減少します。運動の習慣を続ければ、インスリンの働きがよくなり、血糖コントロールが良好になります。また、運動には肥満の解消、生活習慣病の予防というメリットもあります。運動を避けた方がよい場合もあり、運動メニューについても医師と相談するようにしましょう。

    ストレスの少ない規則正しい生活を心がけてください。

    ストレスや過労は血糖コントロールの大敵です。無理なスケジュールは避けて、規則正しい生活を送るようにしましょう。感染症が悪化しやすいので、体調管理には十分に気を付け、うがいや手洗いのほか、身体は清潔に保つように努めます。また、食事療法や運動療法が中心になる糖尿病治療では、家族の理解と協力は欠かせません。

    フットケアの習慣化

    神経障害や動脈硬化、感染症によって、糖尿病では足にさまざまな病変が起こりやすくなります。進行すると、足の皮膚の一部が壊れて腐敗する壊疽に至ることもあるので、日ごろから足の状態には注意が必要です。足の手入れをていねいに行うとともに、足に傷やタコなどがないか観察することを習慣づけましょう。
  • どんな薬?

    血糖コントロールをサポートするさまざまな薬があります。

    糖尿病の薬には、経口血糖降下薬と呼ばれる内服薬とインスリンに代表される注射薬があります。2型糖尿病では、主として内服薬を使用します。内服薬にはさまざまな種類があり、患者さんの症状や条件に合わせて選択されます。薬は医師の指示を守って正しく服用することが大切です。

    主な糖尿病内服薬
    薬を服用するときの注意点

    低血糖への注意と対処法

    低血糖とは、血糖値が低くなりすぎた状態(60~70mg/dL未満)をいいます。悪心、動悸、空腹感、眠気、めまいなどさまざまな症状が現れますが、重症の場合は意識がもうろうとし、昏睡に陥ることもあります。低血糖の症状を感じたら、すぐにブドウ糖(10g)や砂糖(20g)などで糖質を補給するようにしましょう。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用しているときに低血糖になったら、必ずブドウ糖を補給してください。
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