「東和品質」スペシャル対談

羽生結弦 プロフィギュアスケーター

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吉田逸郎 東和薬品 代表取締役社長

東和薬品
山形工場

#04

考えていること、
伝えたい想い

第4回のテーマは、届けたい想いや考えを「伝える」方法について。
届けること、伝えることについて、羽生さんのこだわりや考えが見えてきます。

吉田

私は羽生さんのスケートを見ていてですね、本当に素晴らしいなと思うんです。技術をはじめ、さまざまなものを磨くということに対する、その人の人生を懸けた想いと努力の結晶だ、というふうに思うんですね。今までの人生をかけてやってきた集大成としてここでやっているんだ、というのが分かると、やはり見ている側は感動するんですね。

技術だけがすごいものをパッと見たとしても、どうもそんなに感じない。それこそ技術だけだったら、高性能のロボットを作れば、10回転ジャンプなんて、もういくらでもできる。でも、それでは人は感動しない。人間が自分の一生といいますか、人生をかけて努力をして、その努力の結晶として今があるんだという部分だと思います。それが他の人と比べて一段階高いところにいると、すごい。想いとか人生を感じるという部分で、羽生さんは非常に人間性を出されている。

羽生

ありがとうございます。

吉田

それを受けとめる側もですね、フィギュアスケートを知らなくても想いが分かるというようなところが羽生さんにはあると思います。

羽生

「東和品質」というものも、ある意味では人間に寄り添っているという想いが強いのかなと感じました。先ほど教えていただいた、いわゆるデータとして見た苦味だったり、酸味だったり、これ以上の閾値(いきち)を超えてしまうと人間が飲みにくいと感じるものがデータとしてあっても、それは機械が数値で判定しているわけであって。

人間の思いを考えてみると、じつはこれだけ苦手な方々がいらっしゃるとか、例えば、閾値まで達していないけれども、苦味や酸味のバランスによってはすごく苦手だって思われてしまうことがあるとか。そういったことは、僕たちはこれまで全く感じてこなかったのですが、これからはお薬を見るたびにそういうことを考えながら、感じながら飲むかもしれないですね。

吉田

お薬の味だけではなく、大きさにしてもそうなんです。例えばリウマチの症状に悩まれている方は、指や手が曲がってしまい、いろいろなものを掴みづらいんです。そうすると、小さくて平べったい錠剤は掴みにくい。

では、そのような方のための錠剤の形はどんなものだろう、と考えていく。リウマチの薬に関してはこういう形のほうがいいのかな?いや、もうちょっとこういう形のほうがいいのかな?と。医療現場のドクターや関係者にも意見を聞きながら、研究に取り組んでいます。

羽生

面白いですね。だから人間工学的に考えて、掴むという機能が使えない状況だからこそ、このようなアシスタントをしてあげたい。けれども、それは掴むためには必要な機能かもしれないけれど、お薬を飲むときにはいらない機能かもしれない、ということもありますから。非常に面白いテーマだなって思いました。

吉田

患者さんにとって、飲みやすくなるような製剤づくりを常に研究をしている、ということです。飲みやすさの研究の余地はいっぱいあるんですよ。人ってたくさんいますから、つくったお薬が「ものすごくいいよ」と言われて有頂天になっていると、別のところでは「いや、それは…」ということもあるので…。いろんな意見を聞きながら、一番いいところを見極めていかなければならないということですね。

羽生

なるほど。難病の方々に対しての有効成分が入っているお薬であれば、ある意味、人間工学的な観点から、こんなお薬の形がいいとか、こういう味がいいというものがあるかもしれないですけれど、それが例えば、アレルギーのお薬とか常備するようなお薬にも応用されて、だんだんと役に立っていくこともありますよね。

吉田

そうですね。これからの研究課題でもあるのですが、認知症の患者さんもこれからは増えてくることになる。その場合、お薬が飲みやすくてもですね、飲み忘れてしまうんですよね。

いいお薬があったとしても、飲み忘れてしまったらどうしようもないんです。東和薬品だったらそういった部分もカバーできる工夫がないか考えます。

例えば、貼り薬にしたら、お薬を飲んだというか、現在治療中だということが分かりやすい。その代わり、貼り薬だと皮膚から有効成分を透過させないといけないのですが、私たちの皮膚は外部からの侵入を防ぐようにできているので薬もなかなか入らない。これから、それを可能にする技術的なことから研究していかないといけないのですが、そういう考え方もある。認知症の患者さんにはそのようなお薬が適しているのではないかと。

羽生

ただ、それが逆に身体への負担になってしまう場合があるから、そこのバランスの良さみたいなところは考えていかないと。

吉田

そうなんです。かぶれの問題など、研究の余地はまだまだありますので。だからこそ、いろんな人に対してどんなお薬のかたちが一番いいのかというのを常に研究しないといけない。この考え方は、新薬メーカーも含めて、他社ではあまり熱心に研究されていません。新薬メーカーは、新しい薬効のための新薬を世の中に早く届けること。これはこれでものすごく必要なことですが。

我々がお届けしているジェネリック医薬品というのは、新薬と同じものをただ単に作って安く売るだけではない。ジェネリック医薬品は、そういうふうに思われる傾向がありますけどね。いや、そうではなく、せっかく作るのだからお薬を飲む人のことを考えて作りたいというのが、東和薬品の「東和品質」です。

羽生

より良いものを作る。

吉田

そうです、より良いものを。その時にある最高の技術と最高の機械を使って、より良い製剤を作るということですね。そうやって改良・改善されたお薬は、また医薬品としての承認を取るために再申請を行うことになるのですが、それには新しいお薬を開発する開発経費と同じくらいかかってきますね。

羽生

そうなんですね。

吉田

それでも、その製品が本当に世の中に必要ならば、そこまでやろうと。ここまで考えているメーカーはおそらくないと思いますが、私たち東和薬品はそういう思いで「モノづくり」として考えているということなんです。

羽生

確かに、フィギュアスケートでも同じ技をやるにしても、違う質感みたいなものを出してみたりとか。あと、いわゆるそれぞれの方々の価値観っていうものが絶対としてあって、しかしそれが同じ基準で存在するわけでもなくて、この人の価値観に合ったものをオーダーすると、こういうジャンプになったりするけれども、隣の方に合わせたジャンプをオーダーしたとしたら、全然違った価値観で、全然違った種類になっちゃって…とか、いろいろとあるんですけど。

でも確かに、同じ技、いわゆる同じ有効成分なんだけれども、違ったものにしていく。違ったものとして届けられるように、みなさんにより届きやすく、みなさんにより分かりやすく、伝わりやすくみたいなところは、僕自身もすごく考えているテーマの一つですね。同じところから、もうすでに一定の形ができあがっていて、そこからさらに良くしていく作業って本当に難しいんですけれども。でもそれは、ある意味では一番必要な作業なのかもしれないですね。

吉田

たぶんですね、羽生さんが考えられていることはまさにそういうことで、自分の想いを伝える、それをスケートの技術と今自分が持っている想いを伝える。その想いが伝わるかどうかというようなことだろうと思うんです。そういう意味でいうと、羽生さんがプロデュースした『GIFT』という公演は想いが伝わりましたね。

羽生

ありがとうございます。懐かしい(笑)。

吉田

羽生さんは何らかのテーマや自分の想い、これからの想いというものをお持ちでしょうから、そういうものが伝わるのが非常にいいなと思っています。

羽生

フィギュアスケートって身体表現なので、どうしても言葉みたいに簡単に解釈されるわけではなくて。やっぱりバレエとかもそうですけれども、正直なところ、何をやっているのか分からないということが結構多いんですね。

僕自身もいろんなプログラムを作っていただいたり、自分で表現したりする中で、この音楽は何を伝えたいのかな?とか、この振り付けは何の意味があるのかな?っていうことを考えていくと、意外とみんな分かんないなとか、やっている僕自身もよく分かってないなっていうことが結構あって。そういったことを一つ一つまた振り返りながら、じゃあ、もっと伝わりやすくするには、もっと自分の想いがこもったものにするためにはどういうふうにしていたらいいのかな、みたいなことは非常によく考えますね。

羽生

あとは、映像を使うことによって、よりみなさんが想像しやすく、伝わる、伝えたいテーマのガイドラインとしていけたらいいなと思っています。ある意味では、薬剤のコーティングみたいなものですかね。こういう形だったら飲める、こういう形でもおいしければ飲める。でも美味しくなかったら吐き出しちゃうという人に対して、映像はコーティングのようになるのかなと思います。

吉田

そのような“想い”というものを表現でどれくらい表せるかというところもあるのですが、例えば、羽生さんの想いを本に書くとか?

羽生

はははは(笑)。

吉田

いやいや、例えばですよ(笑)。本というから合わない感じがするだけで、我々のお薬もこのような想いで作っているということを伝えるパンフレットや、東和薬品のブランドを作っていくために、このような想いでこのようなお薬づくりをしていますというものを出していかないとみなさんに分かってもらえないところがあるので。

本じゃなくてパンフレットという形で我々の考える想いを分かってもらう。羽生さんも、そういう別の媒体を考えられて演技と一緒に出されると、思っていたことが表現できるかもしれませんね。

羽生

今、僕が、吉田社長からいろいろなお話を伺っている中で、お薬ってこんなにいろんな工夫があるんだなということを、正直、初めて知って、すごく面白くて。その工夫の前段階の製造する段階や過程も、こんなにも原始的で昔からそんなに変わらないんだと。そこに新しい進化がいろいろ加わってきて、今の製剤ができていっているというのは非常に面白いお話でしたね。その部分は、僕たち一般の人はあまり分からないんじゃないかな。

羽生

お薬のことって、あんまり考えないじゃないですか。例えば、お料理だったら、こんな味がして、こんな素材があって、こういうふうに美味しくさせていて、はい、食べてください!みたいなコース料理もありますけれど、お薬に対してはそんな説明はしないじゃないですか。

吉田

しないですね。

羽生

こんな有効成分が入っていて、こんな工夫がありますよ、みたいな。それが少しでも垣間見えるだけで、僕たちは簡単に飲むという単純な作業ですけれども、そこにいろんな想いが込められていることをあらためて知ることができたな、って思いました。

吉田

お薬の場合はルールもあって、なかなかそういう部分を表立ってPRできないんです。医療関係者には有効成分や工夫についての情報は提供しますけれども。こういう想いでこういう工夫をやっていますが、他社はやっていません、ウチはやっています、みたいな。そんなことは書けません。

羽生

そうですよね。ましてや、命に関わるような病気でお薬を必要としている患者さんにとっては、お薬づくりへの想いや工夫を説明したとしても、なかなか伝わりにくいですよね。

(第5回につづく)

  1. #01基本を大切にする

  2. #02高みを目指し、
    挑戦していく

  3. #03大事にしたいこと、
    共通していること

  4. #04考えていること、
    伝えたい想い

  5. #05将来の夢、ビジョン

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羽生結弦

羽生結弦プロフィール

宮城県仙台市出身。2014年ソチ五輪に出場、フィギュアスケート男子シングル日本初の金メダルを獲得。2018年平昌オリンピックでも金メダル獲得し、オリンピック2連覇という偉業を成し遂げる。2022年、プロ転向を表明。現在プロフィギュアスケーターとして、アイスショーの企画やプロデュース、出演まで、その活躍の幅を広げている。

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