「東和品質」スペシャル対談

羽生結弦 プロフィギュアスケーター

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吉田逸郎 東和薬品 代表取締役社長

東和薬品
山形工場

#02

高みを目指し、挑戦していく 高みを目指し、
挑戦していく

プロのフィギュアスケーターとしてさまざまな挑戦をつづける羽生さん。
第2回は、前回の対談テーマの「基本」と「挑戦」について、吉田社長と意見を交わします。

羽生

さきほど、お薬づくりの根本であるとか基本についてお話しいただいたと思いますが、その基本の部分から「東和薬品ならでは」のこれからの展望という部分をお伺いしたいです。

吉田

羽生さんに出演いただいている当社のコマーシャルで「東和品質」という言葉を掲げているのですが、その考え方の根本にあるのは、お薬に対するこだわりです。薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)やGMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)といった法律やルールに基づいたお薬の作り方がベースにあって、これを守りながら作れば、世の中に製品として出すことができます。しかし、当社としては、それに加えてドクターが安心して処方できるお薬であること、薬剤師さんが安心して調剤できること、患者さんが服用しやすいお薬であることにこだわりたいと考えています。

一番わかりやすい例で言いますと、苦いお薬は飲みたくないですよね。お子さんは特にそうです。苦いけれど、効くからという理由で飲ませる。ジェネリック医薬品は新薬のあとから出すお薬ですので、そういう苦いお薬でも効果はそのままで、苦味を感じにくいお薬にできないかと考えています。

さらに、もっと飲みやすいお薬にするにはどうすればいいのかも考えます。たとえば、(粒が)大きなお薬は、結構飲みにくい。それならば、小さくしたらもっと飲みやすくなるのではないか、と。また、嚥下能力(飲み込む力)が非常に弱くなっている高齢者の方々が飲みやすいように、口の中で溶けて、有効成分はそのまま胃の中に入っていくOD錠(口腔内崩壊錠)の研究にも力を入れています。OD錠は実際に製品として出しているのですが、完璧なものかといわれると、まだまだ高みを目指していきたい製品もあります。お薬って、苦いものが多いので。

羽生

そうですよね。

吉田

その苦味をマスキングするためにどうするのかというと、先ほどコーティングの工程で見ていただきましたが、錠剤そのものを糖衣などでコーティングする方法と、苦みのもととなる(お薬の有効成分となる) 原薬 (げんやく) そのものをコーティングするという方法があります。

お薬は胃の中で溶けて吸収されないといけないのに、苦味を抑えるためにコーティングを厚くしてしまうと、胃の中で溶けきれずに吸収されなかった、ということもあります。そのバランスが、ものすごく難しいんです。成分によっても全然苦さも違いますし、その成分の性質といいますか、溶けやすい、溶けにくいという違いもありますので。東和薬品では、その部分についてもそれぞれに研究をしながら、お薬に合った製法を確立する、という研究もやっています。

吉田

本当は、世の中にあるものと同じようなお薬で十分なのですが、そうじゃなくて、やはり患者さんにとって飲みやすいお薬がどういうものか?ということを追求して、その時にある最新の技術と最新の製造機械・設備で、できる限りの製品を作る。それでもまだ十分でないものがあって、完全とは言えない。

では、完全なものはどのように作るのか、となると、東和薬品には製剤の「基盤技術」を研究する専門の部門があります。これまで不可能だったものを可能にする新しい技術を研究中でして、新しい技術ができたら、その製剤をもっと良くすることに挑戦しています。ここでは、常に挑戦していますね。

吉田

お薬の値段(薬価)は国で決められているので、そのような技術や設備の投資や研究を行うのは、コストがかかってしまうため通常はそこまで本格的にはやならいことですが、東和薬品の場合、こだわりがあるんですね。やはり「東和品質」と言うからには、患者さんが飲みやすいお薬というのが一番望むところで、そのような製剤づくりを日夜研究しています。

さらに、その製剤を良くするためには製剤技術のほかに、原薬の結晶形というものの影響が結構あるんですね。だから、その結晶形までこだわって、製剤に適した結晶形を作り出す。粒度の大きさを揃える、とか、そういうことを行うために、東和薬品のグループ会社である大地化成では、“東和薬品が作る製剤のための原薬”を合成しています。

吉田

このようなこだわりを持って、できる限り良い製剤を世の中に提供したいという思いから、「東和品質」そして「製品総合力No.1の製品づくり」を掲げているんです。私たちには、理想とする製剤というのが常にありまして、そこに辿り着くまではどんな困難があっても必ず挑戦しましょう、ということなのです。その時々の最高の技術とノウハウで、理想に近づくようにしましょう、と。そこにまだまだギャップがあるのなら、どうするのか。改善策を、原薬で考えるのか、製剤技術で考えるのか、機械や設備の分野で考えていくのか。あらゆる挑戦をしよう、と思っています。

東和薬品は世の中に必要なお薬をお届けしても、まだ改良・改善をしたい、という考えでやっています。常に理想とする高みを目指して行動していく、というような考え方ですね。

羽生

先ほどのお話に関係するのですが、僕は今、フィギュアスケートですごくいろんなチャレンジをしながら滑っているんですけれど、フィギュアスケートに携わる中で僕が一番大事にしようと思っているのは、“新しい形でどのようにみなさんに伝えられるか?”という「形」です。これまでは競技会の中で点数というもの、いわゆるデータみたいな数値化されたものにひたすらこだわってきて、そこがある意味では1位という基準点を超えられるか超えられないか、ということを常に絡めながらスケートをやってきました。

ただ、今は、みなさんにとって、どれだけ伝わりやすいか、どれだけ自分の思いが込められているものか、という部分をとても大切にしています。それって、今まで点数を取るために培ってきたフィギュアスケートの基礎とか基本だけではどうしても足りないんですね。新しく“伝わるフィギュアスケート”として、新しく“より表現豊かなフィギュアスケート”として、基盤づくりをしていかなきゃいけないと考えていました。

羽生

この部分で社長のお話を伺っていて、すごく面白いなと思ったことの一つが、その「基盤づくりに挑戦していく」ということで。「基盤」って元々あるものじゃないですか。僕はフィギュアスケーターとして4歳からやっていますが、4歳からスケートの基盤をどんどん作ってもらっている。

お薬の方でいうと、新しい製剤を作るためにはこのチャレンジをしたい、じゃあその前の段階からまずはこれをやっていこう、と。その前の段階をやるためにはもっと前の段階があって、その前もあって…ということを、どんどん掘り下げていって、その「基盤」や「基礎」というものをどんどん新しくしていくっていう作業がすごく矛盾していて面白いなと思ったんですよ。

羽生

「基礎」はそもそも存在しているものだから、そこに応用が積み重なっていくっていうイメージだったんですけど、応用するためにどんどん掘り下げて、基礎ごと新しくするというのは、とても面白い取り組みだなと思いました。

吉田

それはですね、技術的な話でいえば、今ある技術を基盤としてプラスアルファで積み上げていく考え方と、羽生さんがおっしゃったように、その基盤自体をもっともっと強固な、大きなものにしていくという考え方や、大きなものにしていく余地というものはいっぱいありますね。

それは何のためにやるのか、お薬の場合で言うと、今ある基盤だけではお子さんが辛い思いをせずに飲んでもらえるようなお薬づくり、つまり先ほど説明させていただいた苦味のマスキングというものは全部は叶いません。しかも、苦さというのは、人によって感じ方が違います。

羽生

そうですね、苦さの価値観がみなさん違いますよね。

吉田

フィギュアスケートでも点数が高いといっても、その審査員の点数は、違う審査員が見たら違うかもしれない。

羽生

そうですよね。

吉田

苦味ってデータにすると、ある一定の数値を「閾値(いきち)」というのですが、それ以下だったら問題ないだろうと思っても、人によっては苦かった、ということが起こる。

羽生

食べ物と一緒ですよね。人によって好き嫌いがあって、この味が好きだ!って言ってくれる方もいれば、この味がちょっとでもしたら、もう苦手!という方もいらっしゃるんですよね。

吉田

ですから、人それぞれで違う、数値化しにくいものっていう部分を掘り下げていく。今、当社の味覚研究室という部署では、お薬づくりの基盤の中でも味覚研究に取り組んでいます。苦味とはどのような数値か、ということや、人の味覚でどこまで閾値はブレるのか、とか。できるだけ多くの人の「苦い」「苦くない」という程度がどこなのかを調べながら、技術的にそこまでやるかというこだわりを持ってやっていきたい。

人によって違うものなので、なかなか難しいですよね。これでいいんだ、っていう正解がないんですから。だからできるだけ多くの人に、これならいいなと思ってもらえるものを求めてやっていく、ということなんですね。

(第3回につづく)

  1. #01基本を大切にする

  2. #02高みを目指し、
    挑戦していく

  3. #03大事にしたいこと、
    共通していること

  4. #04考えていること、
    伝えたい想い

  5. #05将来の夢、ビジョン

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羽生結弦

羽生結弦プロフィール

宮城県仙台市出身。2014年ソチ五輪に出場、フィギュアスケート男子シングル日本初の金メダルを獲得。2018年平昌オリンピックでも金メダル獲得し、オリンピック2連覇という偉業を成し遂げる。2022年、プロ転向を表明。現在プロフィギュアスケーターとして、アイスショーの企画やプロデュース、出演まで、その活躍の幅を広げている。

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