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統合報告書

統合報告書 2025

東和薬品が応える社会課題

世界でも高い充実度を誇る、日本の国民皆保険制度。この制度を維持していくには、一人ひとりが医療費を節約しなければなりません。その点、「ジェネリック医薬品を選ぶ」ことは、誰もが簡単にできる節約法であり、身近なところでできる社会貢献のひとつです。当社では、ジェネリック医薬品事業をコア事業としつつ、人々の健康に貢献する関連事業を創出していくことで、社会課題に応えていきます。

課 題ジェネリック医薬品で
医療費の削減に貢献

日本の医療費問題と
ジェネリック医薬品の重要性

日本の医療費は高齢化の進行などに伴い年々増加しており、2023年度の時点で約47.3兆円に達しました。※1厚生労働省の試算によると、2040年度の国民医療費は約79兆円に達すると試算されています。※2増大する医療費は、国民皆保険制度の持続可能性を脅かしており、解決策が求められています。

一方で、保険料や税金等を支える労働人口が減少していることから、国民皆保険制度の前提が崩れかけています。医療費がこのまま試算通りに膨らみ続けると、今まで当たり前に受けられた医療が受けられなくなったり、窓口負担や税金が上がったりという事態が想定されます。今後、国民皆保険制度を維持していくため、医療費の増大に歯止めをかけることが欠かせません。

こうした状況の中で、ジェネリック医薬品の役割はますます重要になっています。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同等の効果を持ちながらも価格が低いことから、先発医薬品と置き換えることで、年間で約1.6兆円※3の医療費を抑えることができます。これはまた、患者さんが支払う薬代の軽減にもつながります。さらに、ジェネリック医薬品の普及は、医療機関や薬局のコスト削減にも寄与し、ひいては医療システム全体の効率化に貢献します。



※1 厚生労働省「令和5 年度 医療費の動向」より
※2 厚生労働省「医療費の将来見通し」より
※3 厚生労働省「令和6 年度薬価基準改定の概要」より

ジェネリック医薬品の信頼回復と
医療制度の持続可能性

ジェネリック医薬品の重要性が増す中で、一部製薬会社における、医薬品、とりわけジェネリック医薬品の信頼を著しく失墜させた違法行為は誠に遺憾です。ジェネリック医薬品に対する信頼の回復は、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整えるためにきわめて重要です。ジェネリック医薬品の品質や信頼性に対する懸念が残っている現在、これを払拭するためには、製造工程の厳格な管理と透明性の高い情報提供が不可欠といえます。そして、患者さんが安心してジェネリック医薬品を選択できる環境を整えることが、持続可能な医療制度の実現に向けた鍵となります。これまでジェネリック医薬品の品質を重視してきた当社として、品質および信頼性のさらなる向上に今後、対処してまいります。

ジェネリック医薬品のさらなる
品質向上と安定供給体制の強化

当社では、日本の医療費削減と持続可能な医療制度の実現に貢献すべく、ジェネリック医薬品の開発と提供に尽力しています。現在、さまざまな疾患領域をカバーするため、700品目以上の医薬品をラインナップしています。

製品開発においては、新薬と有効性・安全性が同等であることはもちろん、最新の技術と設備で、製品の価値を高める研究を行っています。また、改良・改善を重ねた「東和品質」の製品を提供するため、製品の品質向上や付加価値創造に取り組んでいます。

そして、ジェネリック医薬品の安定供給を確保するため、原料調達から製造、在庫管理までを包括する供給体制を整えています。当社では現在、大阪、岡山、山形に生産拠点を設け、3工場の年間生産能力を2024年3月末の140億錠から2027年3月期に175億錠へ増加させるべく、増産体制を構築中です。

こうした生産体制のもとで途切れのない供給を実現するための取り組みを強化し、医療機関や患者さんに必要な医薬品を常に提供することを目指しています。この供給体制の強化は、医療現場での信頼を築き、患者さんの治療を支える基盤となっています。

東和薬品の技術イノベーション

当社では、新薬と有効性・安全性が同等のジェネリック医薬品を製造するのに加えて、創薬における技術革新を通じて、服用される患者さんの目線に立った医薬品の開発に取り組んでいます。

東和薬品の技術一覧

  • RACTAB®技術
  • FINEST-Pow®FINEST-Gran®FINEST-Core®
  • ARTICRE®技術

「とけやすさ」と「硬さ」という相反する性質を高いレベルで両立することを目指した、水なしでも飲めるOD錠(口腔内崩壊錠)をつくるRACTAB®技術など、「高付加価値(高性能)を付与する製剤技術」「高効率の製造技術力」「ニーズに応える開発力」といったイノベーションに挑み続けています。

Nox Think Tank Project

ニトロソアミン問題への挑戦として「Nox Think Tank Project」を立ち上げ、医薬品へのニトロソアミン類の混入という社会問題の解決へ向けた取り組みを積極的に行っています。混入リスクをより確実に評価できる分析法として、“製剤中のニトロソアミン類の評価”に“原薬中の原因アミン類の評価”を加えた「東和アミンアプローチ」を開発し、2024年12月に医薬品中のニトロソアミン類の混入を管理する一斉分析法に関する研究成果を、米国化学会学術誌『ACS Omega』に発表しました。また、一連の研究の成果として、世界で初めてNOxを10億分の1(ppb)まで低減させた環境下でアトモキセチン錠を製造し、ニトロソ・アトモキセチン混入量が許容限度値を下回る製剤の製造に成功いたしました。この研究成果は2025年8月に米国化学会学術誌『Org. Process Res. Dev.』に発表いたしました。


東和品質

「東和品質」とは、患者さんに安心して使っていただける医薬品を届けるために、当社が製造から供給まで一貫して品質を追求する姿勢を表したものです。原薬の選定、設備や製造工程、品質試験に至るまで、全ての工程において厳格な管理を徹底しています。また、独自のサプライチェーンを進化させ、いつでも確実に医薬品を届けられる安定供給体制の構築にも力を注いでいます。見た目では判断できない医薬品の品質だからこそ、使いやすさだけでなく、安全性と供給責任にも誠実に向き合い、品質のさらなる向上に努めています。

品質と安定供給への取り組み

当社では、近年の医薬品の供給不安や今後も続く市場からの要求への対応を見据え、Tスクエアソリューションズ株式会社とともに、医薬品供給プロセスのさらなる効率化に向けた取り組みを行っております。販売・生産計画、実績、在庫状況、設備稼働状況などの情報を集約・可視化するシステムを構築し、医薬品供給プロセスの省力化や意思決定スピードの向上を目指しています。

今後は、社内情報の共有強化による市場変化へのより柔軟な対応の実現、シミュレーション機能拡充による計画精度の向上、市場や社外情報の利活用・他システム連携による供給プロセスの高度化に取り組んでまいります。

課 題健康関連事業

健康寿命の延伸と疾病の予防

日本では超高齢化が進み、人生100年時代に向けた健康寿命の延伸が重要な課題となっています。健康寿命はWHO(世界保健機関)が2000年に提唱した概念で、健康に生活できる期間を指します。従来は平均寿命が重視されてきましたが、近年は疾病を予防し、健康で活動的な生活を送ることが重視されています。また、医療費抑制の観点からも、健康寿命の延伸は欠かせない要素です。
 
こうした社会背景を踏まえて、当社は「人生100年時代に向けた総合ヘルスケアカンパニー」として、ジェネリック医薬品の製造販売にとどまらず、ヘルスケアに関連する多様な製品・サービスを通じて、最適なソリューションの提供に努めています。健康関連事業では、「健康」「未病」「病気」「リハビリ・介護」の4つの健康状態に分類し、当社が定める9つの重点領域と組み合わせて展開しています。さらに、地域課題の解決を通じて「健康共創フィールド」を展開し、人と地域をつなぐコーディネーター役を担っています。

※クリックして拡大できます

  • 認知機能セルフチェッカー

    VRと視線追跡技術を組み合わせた認知機能テストサービスです。「神経心理学的検査」をベースに5つの領域(記憶・注意・言語・計算・空間認識)より出題され、正解を見つめるだけで認知機能を5分で評価します。

  • サバローサカレー

    三重県多気町の特産品である前川次郎柿を使用し、スパイシーな辛味の中にもまろやかなコクと甘みが味わえます。1食あたり、塩分が1.2g、原材料のサバ由来のDHA・EPAが合計320mg含まれています。
    ※一般財団法人日本食品分析センター調べ

  • Minoプラス

    第1類医薬品の発毛剤です。髪のお悩みを意識し始めた方にも手に取ってもらいやすいよう、生活に自然と溶け込むデザインにこだわりました。発毛成分ミノキシジルに4つの成分をプラスした複合剤タイプです。
    ※パントテニールエチルエーテル、ピリドキシン塩酸塩、トコ フェロール酢酸エステル、ℓ-メントール

  • ヘルスケアパスポート

    生活者個人に紐づく健康・医療情報をPHR(Personal Record)として管理し、医療従事者や家族と双方向に共有することで、適切な医療の提供と健康増進を可能とするクラウド型PHR基盤サービスです。

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